第95話 【終幕】 始まりを待つ夜
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倒れる二人は担架に乗せられて衛兵に運ばれていく。
「二人に目立った怪我はないと思うけど病院へは急いでくれ」
その衛兵に指示を出す騎士が一人。
騎士はこの焼けた聖堂に似合わないほど綺麗なままだった。服は一部破られた跡があるが戦いの後を見るに戦闘で出来たものではないだろう。
もう既に髪の色と瞳の色は戻っている。金糸を紡いだような金髪に、優しい萌葱色の瞳。先ほどの燃えるような朱色とは全く違うものだ。
騎士は聖堂の残った壁を見ていた。
壁には絵が描かれていた。今は燃えて殆どが分からなくなっているが、一度全体を見ることができたので大丈夫だろう。必要とあれば描き上げることも可能だ。
「あの絵は一体……」
「大丈夫だった? 」
騎士はふいに声を掛けられた。
「エイル副隊長。すいませんお手を煩わせて……」
ウィルがこの部屋に来るのに時間が掛ったのには理由があった。
彼が戦った黒い奴らはかなり危険な強さを持っていた。一人一人が王国騎士の平均的な強さ以上の実力を持っていた。もちろんそんな奴らを直ぐに行動不能にしてはいたのだが。放置することもできず、いっそのこと一緒に移動しようとした時にエイルが到着したのだ。
その後は、彼らと扉の先で座り込んでいた少女を任せレンに追いついたのだった。
「いいの、いいの。全然大丈夫だよ。僕が勝手に来たんだし、それに街への被害はなかったよ。本当に馬鹿げた力だよ君は」
エイルは事情を理解し、その間に周りの人を非難させ、多くの衛兵を呼んでいた。
「そちらも大変だったんですね」
ウィルはエイルの包帯を巻いた体を見てそう言う。
「多分こっちよりはましだと思うけどね。――――そうそう、僕が行った方は君と同じ新人君に、病院には隊長が向かったからもう帰ってもいいって」
傷だらけの騎士はドカッっと腰を下ろす。
「私は大丈夫です、病院の方に向かいましょうか? 」
「いいって、こういう日こそ休まないと」
「そうでしょうか……? 」
「それに、君病人でしょ。今回ちょっと頑張ってもらったけど。ほんとは一週間ぐらい休んでも怒られないよ」
今日二人が病院にいたのはウィルの治療のためだった。
「病人ではありませんよ。少し、ほんの少し毒に侵されているだけです」
「いやいや、その毒、あの龍種ですら、イチコロって代物だったよね?」
数日前にあった戦いにより負ったものだったが、病院では打つ手がなく、正直どうしてこんなにピンピンしているのか不思議でならないようだった。
「どうでしょうか、そのような話。ただの噂話では」
「君、本当に化け物だね……それにしても、ついてないよね。まさか、連続で禍つ神に会うとは……それにまた変なやつも出てくるし」
「はい、話を聞くにこちらのヴァネッサと名乗る女とそちらのスカリと名乗った男に繋がりがありそうですが、それ以外はまだ何一つ分かっていません」
「それに、おそらく黒幕だった。カエル枢機卿は亡くなってしまうし、その息子ジャクは行方知れず。運に見放されたね」
「そうですね。私に幸運というものは生まれた時からなかったのかもしれません」
明け始めた空にそう呟く。その言葉にエイルは苦笑いしか返せない。
二人の騎士はお互いの奮戦を称え合うことはしない。敵を倒す、人を救う、そうした命のやり取りこれらは騎士にとって当然のことで日常だからだ。そんな、日常を平凡な人間は理解できないだろう、理解したくないだろう、理解すべきではないだろう。
読んでいただきありがとうございました。
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これにて1章終了です。私が初めて小説を書くということもあり至らぬ点だらけだったと思いますが、ここまで頑張れたのも読んでくださる皆様のおかげです。
そして、これから少しの間、投稿を遅らせる、又は無くす事にして、一話から手直ししていこうと思います。ぜひ、この機会にまた改めて読んでいただけると嬉しいです。
一応追加で要素をたすことはしないつもりなので読まなくても全然話の食い違いは起こらないと思います。
ここまで読んでいただき本当にありがとうございました。もしよろしければこれから先もお読みいただけますと嬉しく思います。




