第90話 覚悟と勇気
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斬られた火炎は消滅し、熱風だけを残していった。
「お前、その剣どっから出した? 」
「いや、一応ずっと持っては居たんだよ」
騎士は黒い剣を握る。シンプルな形状の片刃の剣で、騎士剣とは全くの別物に見える。
そんなものは持っていたようには見えなかったが……。
「お前の能力かなんかか? 凄いな」
「そうではないんだ。剣の方の能力だよ。僕には特別な力はないからね」
そう言いながらその剣を構える。片手剣よりは少し短いが火炎を斬るのに支障はなさそうだ。
「良く分からんが、それで何とかなりそうなのか? 」
「すべての火炎を斬りながら近づくのは少し難しい」
新たに剣を持つ騎士に期待したのだが難しいらしい。騎士に剣は鬼に金棒ぐらいの安心感はあるのだが、本当に難しいのだろうか。
「お前ならあの火炎ぐらい何とかなりそうだけどな」
「ただの火炎だったらそうできたんだけどね。あれは斬らないと大変なことになりそうだから」
奴の炎は石の壁をも壊す威力だ。そんなものが壊れた壁から外に出てしまったら大惨事は必至だ。それにここは、王国の街中であり、すぐ近くに多くの民家が並んでいる。それを気にしているのだろう。
「せめて、あの剣が使えたらね……」
そう言って、地面に突き立つ騎士剣を見つめる。
「あれが、使えたらローズを助けられるんだな? 」
「レン? 」
「だな? 」
「ああ、任せて欲しい。必ず助ける」
「じゃあ、俺がお前に渡す」
丁度そう言い終わった時だった。熱が迫る。大きな炎の塊が飛んでくる。それも、数え切れられないほどだ。
――――が、それらは一瞬にして消え落ちる。いや、斬り落とされた。
「分かった。合図をしたら走って」
騎士はその慣れない剣を使い、息一つ乱さず炎を消した。
「本当にしつこい……」
ローズは掌に魔力を溜める。
『魔力』そんなもの俺は感じたりすることは出来ないはずだが、あまりに強大なものは流石に俺でもわかる。少しづつ周りの温度が上がる。汗で肌が滲む、そんなに熱いはずなのに震えが止まらない。
「レン……」
「違うよ、武者震いってやつだから。大丈夫だ」
騎士の不安げな視線を首を振って否定する。
心配は無用。そもそも、俺が狙われている感じしてないし。するなら、ローズの心配をしてほしいね。
はあ、いい加減面倒ごとを起こさないでほしい。俺は静かにお金を稼いで情報を集めて、元の世界に帰りたいだけだったのに。どうしてこうなったんだっけ? つくづくついてない。そもそも変な世界に飛ばされるわ、仕事にありつけたと思ったら仕事場は事件のバーゲンセールだし。……こんだけ頑張ってるんだし給料は弾むんだろうな。
て言うかさっきウィル、ローズのこと『ローズ』って呼んでたよな。敬称がない……一体どういう事なんだろう。よし後で聞いておこう。
うん。大丈夫。頼りになる騎士もいる。
だから……、
土壇場になって失敗だけではしてくれるなよ俺。もう、二度と自分を見損なわせないでくれ。
そう言って拳を握り、太ももを強く叩く。
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