第88話 憎い憎い憎い憎い
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部屋には肉が焦げた臭いが充満している。
「ごめんなさい。この人のおかげで私はここにいるのに……、私が唯一と言っていいほど大切なものを私から貰おうとしていたから……あ! もちろん私の唯一はあなただから安心してね」
黒い塊を眺めていた黒き姫は俺に振り向いてそう笑顔で続けた。
「お、お前は誰なんだ……? ローズはどうなってるんだよ! 」
「慌てないで、怒らないで、私はここにいるから。大丈夫私はあなたの味方だから 」
また、一瞬のうちに俺の目の前に立っていた。
どうやら会話は成り立っていないようだ。
ローズはどんどん近づいてくる。遂に顔に息がかかるほど近づいた。その瞳は俺を見ている。俺ではない俺を。そして、笑みを浮かべ俺の腕をつかむ。
「行こ」
そう短く言うとローズは右手を壁につける。そうすると黒い扉が現れた。不思議と扉からは嫌な感じはしない。だが、その先がいい所とは限らないだろう。
「ちょっと待って、どこに連れてく気なんだよ」
「私たちの大切な場所」
そう言ってグイグイと引っ張られていく。力が力だけにその表現では優しく感じてしまうかもしれないが、とんでもない腕力でだ。抵抗は無駄だろう。
ローズが扉に手を掛けた時だった。
急に光が差し込んできた。その光は月光とはまた違った。
その光が消え、それが何か理解する前に部屋の壁の一部が音を立てて崩れた。いや斬られた? 崩れる瞬間綺麗な切り口が見えたような気がした。
崩れた壁により煙が起こる。そしてその奥から人影らしきものが見えた。
「レン、ごめん遅くなった」
金髪で剣を携えた騎士はしっかりとした足取りでコツコツと歩いてくる。
「あなたはローズ様なのか? いやこれは……」
騎士は黒いローズを見て少しは驚いているようだ。
「ああ、ローズに何か入ってるみたいだ。どうにか引きはがさないと」
黒い姫は俺の手をつかんだまま振り向き、騎士をじっと眺めていた。
「あなたはそこにいるべきじゃない、その体から離れていただけませんか? 」
騎士は優し気に黒い姫に語り掛ける。
「……」
黒き姫は何も答えない。そして、掌をそっと騎士に向けた。
ウィルが燃え上がる。あの時の炎だ。
闇より黒い焔が騎士を覆う。が、それは火の粉のように振り払われる。騎士の服装に焼けた後は一つもない。
騎士は残念そうに眼を伏せる。そして、静かに剣を抜いた。
「おい、ウィル。ローズは――」
直感で分かる。こいつは斬る
「安心して。ローズには傷一つ付けない」
そう言うと静かに目を閉じる。そして――――髪の色が鮮やかに紅葉する。ゆっくりと開かれた瞳はローズと似た深紅の色をしていた。
その姿を目た黒き姫が口を開いた。
「お前は……」
ただの一言だった。
黒き姫はそう言っただけ。ただそれだけだ。
憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い。
憎悪。そんな感情なのだと思う。それを体中からあふれさせていた。
その対象は他ならぬ。騎士に向けてだろう。黒い姫とウィルは何か関係があるのだろうか?
騎士は常人が受ければ即死するほどの感情を受けて尚動じてはいなかった、ただ、どうしてそこまで自分を恨んでいるのだろうと考えていた。
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あー




