第86話 漆黒の瞳
ここまで来ていただきありがとうございます。
「ローズ……? 」
俺は机に寝かされているローズに駆け寄った。
服はいつもの赤を基調としたドレスではなく、黒いドレスを着ていた。
ローズに手を伸ばそうとするが、手が途中で止まってしまった。脳が、本能が、告げている。
ただの服だ。それなのに、ただあるだけで嫌悪させるものなんて初めて見た。これは人が着てはいけない。
取り合えず、この台から降ろそう。が、やはり手が動かない。
「クッソ……馬鹿か、俺は……」
頭を搔きむしる。深呼吸をして、ローズに触れる。頭とひざに手を入れてお姫様抱っこのような格好で降ろそうと思い手を入れる。――――が、びくともしない。流石にこの格好ならば持ち上げられるはずなのだが……。まるで、机に縫い付けられているようだ。
一秒も触れていたくない服に触れ、頭がおかしくなりそうだ。一旦、移動させることは諦めてローズから手を放す。
ローズは相も変わらず眠っている。ならば、起こせばいいのかもしれない。
「ローズ! 起きろ、目を覚ませ! 」
俺は大声でローズに呼びかける。何の反応もない。またカエルが何かしたのかもしれない。
俺はまたローズの手を握る。そして、再び呼びかける。
「ローズ! ローズ!! 」
ローズは何の反応もない。
こうなったら恐らく何かしたカエルを問い詰めるしかない。そう思い、俺はローズから離れ、発狂しているカエルに近づく。
カエルは今だこちらを向いている。だが、よく見るとローズを見ていたわけではないようだ。何か、もっと上を――――
そんなことはどうでもいい、取り合えず殴ってでも話を聞かなくては。この部屋もヤバいが、あの服を早く着替えさせなくてはいけない。
「おい、ローズに何したんだよ! どうやったら目を覚ますんだ! 」
「ひ、ヒーー、申し訳ありません。申し訳ありません」
何か怯えたように後ろに下がる。
「今更何言ってんだよ……何にもされたくなくちゃな、早くローズの……」
違う、これ俺におびえてるんじゃない……もっと後ろの。
俺はゆっくりと後ろを振り返る。そこには――――
「ローズか? 」
黒い姫が上半身を起こしていた。
こちらを見向きもせず。ただ起き上がって真っすぐその方向を見ている。
「お、おい……大丈夫か……? 」
俺はローズに近づく。ローズはその言葉に何の反応もせずただ一点を見つめている。顔は髪でよく見えない。
一歩近づくたびに吐きそうになる。嫌な感じを煮詰めてさらに腐らせたみたいだ。
手の届く距離に来てもローズはこちらを見向きもしない。
「ローズ! おい! 」
俺はローズにそう言いながら触れた。
ローズがこちらを向いた。その時にやっと顔を見た。瞳が漆黒に染まり、焦点が定まっていない。表情は無気力なものでどこか寝ぼけているかのようにも見えた。
そして、焦点が俺に合う。次の瞬間俺は抱き着かれていた。
読んでいただきありがとうございました。
もしよろしければ感想、評価、ブックマークもよろしくお願いします。
先日コロナの注射してきました。痛くてかけなくてすいませんでした。




