第84話 呆れたため息は
ここまで来ていただきありがとうございます。
「ここは何処なんですか……」
今の状況を理解できていないカナは周りを見渡しながら尋ねる。その声は普段より少し元気がない。
「教会だ。確か……お金だとかなんとか中央教会? 」
「ああ、ハイ。カネ―中央教会ですか。でも……なんでそんなところに? 」
俺たちは今、カネ―中央教会の大聖堂奥の別棟にいた。正直ウィルが負ける気はしないがそっちも心配だ。こうして、カナと出会えたのは良かったが、現状は何も進んではいなかった。
「それより、ローズを探してたんだった。こっちがここで行き止まりってことは正解は右だったのか……」
「一人で何ぶつぶつ言ってるんですか? 現状を説明してください」
カナは独り言を呟く俺の足を黙って踏ん付けながらアピールしてくる。痛いです。
「そんな時間はない。から、歩きながら話すぞ」
そう言って、俺はそのほこりっぽい部屋を出た。
そして、ここまでの一通りをカナに説明する。ローズがさらわれたことやカエル枢機卿の事、騎士が来ていること。
「それであなたは、まんまと二択を外したわけですか……」
「いや、お前を見つけられたから、大ハズレってわけじゃないぞ」
俺は恐らく疲れているであろうカナのために少しゆっくり歩いていた。
「はあ、そのしたり顔がなければまだよかったんですが……」
「うなこと、真面目顔で言えるほど俺は顔の面は厚くねぇよ。どこぞの騎士でも、大それた英雄でもないからな」
そんなことを話している間に俺が左に曲がった角が見えてきた。走るとあっという間だった距離はゆっくり歩くとまあまあ時間がかかるのは仕方がない。
「多分この先にあいつがいるはずだ」
「結構長そうな廊下ですね……」
カナが見つめる先は廊下の突き当りにある扉のようだ。距離にして先ほどの部屋からここまでの三倍はあるだろうか。このままのペースでいけばかなりの時間がかかってしまうのは火を見るより明らかだ。
「ああ、でもそう遠くないだろ。……何立ち止まってんだ。行くぞ」
「私はここで待っています。さっさと行ってきたらどうですか」
そう言って、カナは腰を下ろし壁にもたれかかる。
「別に大丈夫ですよ、どっちかと言うとあなたの方が危険な気がしますし……」
カナは目をつむり息を整えるようにそう言った。
「カナ……」
「私が行っても足手まといですよ。私に戦いなんて無理ですし」
「……俺もできねぇよ」
「早くいかないと手遅れになっても知りませんよ。手遅れになったらあなたを殺しますけど」
物騒な物言いは、どこか優しさを感じる。
でも、カナを置いて行くなんて……。
「話によると、王国騎士が来ているみたいですし、その方に助けていただくことにします」
「……」
はあっとカナは呆れたようにため息をつく。
「レンさん。どうかローズ様をお願いします。あの人を助けてあげてください」
カナは目を開き俺の胸に手を置き、今までに見たことのない丁寧な言葉で、態度でそう懇願してきた。まるで別人のようだった。そんなことをするなんて。
「……分かった。行ってくる。ローズの事は俺に任せろ」
「傷一つでもローズ様に付いていたら。分かってますよね……」
カナはそう言って静かに再び目を閉じた。
「ああ、爆発させられるんだろ。俺は死にたくないからローズに傷一つ付けずに連れ帰ってやるよ」
その言葉を最後まで聞ききれたのかそれは分からない。だけど、その時のカナの表情は最高にいい笑顔だった。
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