第81話 銀の指輪
ここまで来ていただきありがとうございます。
入り口からは甘い花の匂いが立ち込めてくる。門はまるで俺たちを歓迎するかのように開いていた。
「どうする、今ならまだ戻れるよ? 」
「今更、聞くかそんなこと……行くに決まってんだろ」
俺は肩を竦め、大きな扉を見つめる。
金髪の騎士は扉をノックする。律儀な奴だ、このような状況では別に勝手に入っても許されそうなものだが。
扉の奥からは何返事もしない。もう夜だが、深夜と呼ぶほどでもない。出てきてもおかしくはないはずなのだが……一向にその様子はない。
「なあ、これもう入ってもいいんじゃないのか? 」
「そうだね、失礼させていただこう。――――その前に君に渡しておきたいものがあるんだ」
「渡しておきたいもの……? 」
そう言って手渡してきたのは指輪だった。宝石などはなく、銀色のシンプルなものだ。
「これは、エイルさんから渡されていたんだよ。流石だよこうなる事を予測していたとしか思えない」
ウィルもそれと同じと思われる指輪を右手にしていた。
何なんだこれ、エイルさんから渡されていたものらしいが……。何か特別の効果でもあるのか? 取り合えず俺も右手の中指につけたが。
扉の先は一昨日来た時とは気持ち悪いほどに違っていた。
内装は当然変わっていない。だが、雰囲気がまるで違う。人は少ないものの笑顔が咲いていた入り口から広がる大聖堂は今や重苦しい泥の中にいるかのような圧を感じる。
その圧の発生源は――――あの時に通された小さな聖堂からだ。
騎士は俺が気圧されている間にもうすでにそちらを警戒していた。
「レン、絶対に僕から離れないでね」
俺は静かにうなずく。
そして、俺たちは小さな聖堂の入り口に向かった。ウィルは躊躇なく扉をノックをする。
「どうぞ、お入りください」
すると中から聞き覚えのある声が聞こえてきた。
俺たちはその声に従って部屋に入る。
その声の主はカエル枢機卿。ローズが発作を起こしたその直前に会っていたあの男だった。
「こんばんは」
「夜分遅くに突然申し訳ありません。カエル枢機卿」
ウィルは騎士らしくカエルに挨拶をする。
「どうしたのかね? 」
カエルは笑みを浮かべ、心を見しているかのように尋ねる。
「単刀直入に言います。ローズ様がこちらにいますね? 」
その場は静寂に包まれる。この男は一体何を考えているのかその瞳からは読み取れない。
「……そうだと言えば、どうするんですか? 『無上の騎士』」
「返していただくだけです」
未だカエルからは気味の悪い笑みが張り付いたままだ。
すると、突然カエルの表情が曇り始めた。
「どうして……、効きていない……?」
突然カエルがそんなことを言った。
『効いていない』そんなことを言っていた女がいた。その女は誰かからその力を借りているような口調だった。まさか――
「私たちにその類の力は効きません」
ウィルはそう言って右手の銀の指輪を見せる。
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夏は暑いですね。




