第80話 男二人夜を駆ける
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「どうしてこんなことに……」
俺は今まさに、夜空の下を美しい金髪を靡かせる騎士に両手で抱えられていたのだ。俗にいう、お姫様抱っこである。
「君が付いて行きたいって言っていたような気がするけど……降ろそうか? 」
騎士は訝しげな顔をして俺に問いかけてくる。この状況に疑問は微塵もないようだ。どうなってるんだ。
「いい、このままで大丈夫です……もうお嫁にいけない……グスッ」
「良く分からないけど……、君はどう頑張ったってお嫁には行けないよ。行くとしたらお婿になると思うよ」
多分本気で言っているのがたちが悪い。もう突っ込む気にもなれない。
俺たちは今、馬車にも負けない速さで道を駆けていた。騎士がただ走っているのだ。それも、一人の男を担ぎながらだ。どんな筋力何だろうか? よく考えると、エイルさんが助けに来た時も馬車らしき乗り物は確に出来なかった。あのお兄さんも走って来ていたのだろう。この世界の騎士はみんなこんなのだろうか?
「どうしたんだい? 急に黙って」
「いや、何でもない……それより、ローズがどこにいるかのか分かるのか? 」
騎士は迷いなく走り続けていた。まるで、どこにローズがいるのか分かっているかのように。
「思い当たるところがあってね、僕がこの屋敷に向かっている時に一度馬車とすれ違ったんだよ」
「馬車? 」
「ああ、その時はただの馬車に見えたけど、先ほどのヴァネッサの能力を考えると操られていたのかもしれないと思ってね」
ヴァネッサは精神系の能力を有していた。そういったことも容易いだろう。
「でも、どこに行ったのか分かるのか? 」
「それは大丈夫、新しい車輪の後ならわかる」
そう俺に微笑んで見せる。
そしてその後は街の東に向かっていた。この時間には、人は家の中にいるらしく人通りは皆無だ。昼間の賑やかな街とは一転している光景はどこか異質にも思えた。こんな姿を大勢の人に見られずに安心したが、そう思ったのも束の間、ある見覚えのある建物が見えてきた。
「あそこは……」
「あれは三大重要施設、『カネ―中央教会』」
丁度一昨日来たところだ。こうなってくると犯人は決定的になってくる。
「あの、クソ爺。やっぱり……、最初から胡散臭いと思ってたんだよ」
「レン、それはカエル枢機卿の事を指しているのかい? 」
騎士は抱きかかえる俺を見つめる。教会と結びつきが強いこの国の騎士なので面識はあるのだろう。
「そうだよ、お前もなんか嫌なことされたのか」
「いいや、本当の事を言われただけだよ」
騎士はそう言って、より力を込めて地を駆ける。
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