第79話 終わらない夜
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「取り合えず、ロー……王女様を探そう」
金髪の騎士は俺にそう提案する。それは確かに『ローズ』と言おうとした口振りだった。
「そうだな、こっちに来たってことはローズの寝室が怪しいと思うんだが……聞いてるのか? 」
そこには触れずに俺は考えを共有しようとしたのだが……
騎士はその整った顔立ちで眉を少し顰める。そんな思索にふける横顔は何とも絵になるものだと思った。イケメンめ......。
「ん、ああ。そうだね。じゃあそこに向かおう」
「しっかりしてくれよ。俺の命はお前にかかってるんだからなウィル」
俺はそう軽口をたたく。
「そう言ってくれるのはありがたいけど、もうこの屋敷は大丈夫だと思うよレン」
「その心は? 」
「感だよ」
騎士は片目を閉じ、そう微笑んで見せた。俗にいうウインクとやらだ。
クソカッコいいなおい。王国近衛騎士団と言う何ともカッコいい肩書を持つ金髪で萌葱色の瞳を持つ騎士は戦いだけでなくユーモアも持ち合わせているみたいだ。
そんな話をしながら目的地に向かう。ローズの部屋に。
「ここだ……」
ローズの部屋の前は何ら変わっていない。先ほどあった爆発の影響も届いていなかったようだ。
「念のため、僕が開くから後ろに下がっていて」
「分かった。任せる。それより、お前の一人称って『私』じゃなかったか? 」
「はあ、堅苦しいのは嫌だからね……それより開くよ」
ちょっと呆れられてしまった。気になってしまったんだから仕方ないよな。
部屋はゆっくりと開かれる。中からの部屋の明かりが暗い廊下に流れ込んでくる。俺の暗闇に慣れた瞳は突然の光の波に飲み込まれる。二、三度瞬きをするとようやく光に慣れたのか部屋の全貌を理解した。
部屋自体は整っている。いつも通り――――そう言っても差し支えはないだろう。
ただ一点おかしな点があった。ローズがいないのだ。
「な……どうして」
「これは……連れ去れた……」
騎士はすぐさま走りだそうとする。事実床に足がめり込んでいた。
「待ってくれ! 俺も連れて行ってくれ」
そんな言葉がなければ瞬きの間に走ってしまっていただろう。
騎士は少し驚いた顔をするとすぐに納得したようにうなずく。
「分かった、行こう」
騎士は分かっていた。彼がこの先で役に立たないということを――、彼も守らなくてはならなくなることを――、そして――――彼が自分の弱さを理解していることを。
そして、夜の月に二人の人影が映る。
長身の金髪の男が、黒髪の男をお姫様抱っこしているなんとも珍妙な光景だったが……。
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