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無力の英雄  作者: 覡天狐
第一章 ~二輪のバラ~
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第7話 異世界だろうがどこだろうが目覚めは変わらない

ここまで来ていただきありがとうございます。

 鳥の囀りが聞こえる。意識の覚醒。目を開けてあたりを確認する。当然昨日と同じ視界が広がっている。


 やっぱりここに来たのは夢なんかではないみたいだ。目覚めた時には自分の家のベッドで起きることを願っていたが、そんなことはなかった。


 ローズから与えられた部屋は信じられないほどにいい部屋で、疲れもよく取れた


 上体を起こす。体を伸ばして、満足すると窓に視線を移した。程よい朝日が目覚めの時間を告げている。


 ベッドから足を下ろし、立ち上がる。


 そうそうこの世界には時計の代わりとして宝石がついた砂時計のようなものがある。一回落ちきるのに六時間ほどかかり朝、昼、夜に分けられていて朝は宝石が青く、昼は黄色く、夜は赤く光るようになっている。細かな時間はその色の代わりぐわいで確かめるそうだ。


 それによると今は7時当たりのようだ。


 顔を洗い、用意してもらった服を着る。黒いタキシード? 燕尾服? この世界での執事の服だろうか。サイズ感もよくなかなかにカッコいい。


 そうしていると扉からノックするを音が聞こえた。朝食のようだ。


「おはよう、ローズ、カナちゃん、ミキさん」


「おはよう」


「おはようございます」


 ローズは朝が弱いのか疲れた様子で、カナちゃんは昨日と打って変わって無表情で、ミキさんは静かにお辞儀だけをするという三者三様の反応をみせた。


 そのミキさんとは昨日よくしていただいたここで執事をしている年配のおじいさんの事だ。今後はこの方にいろいろ学んでいくことになるだろう。


 朝食はローズの方針で従者も一緒に食事をとるという貴族としては異質なものだが、気分は悪くない。


 そして、昨日の夕食もおいしかったが今日の料理もおいしい。料理はすべてミキさんが作っているらしいのだがすごい腕前だ。レストランもかくやという出来だが、如何せん料理の材料も名前も想像がつかない。


「そういえばメイドの子ってあと二人いたよなその人たちって一緒じゃないのか?」


 ここには三人のメイドさんがいて、昨日のあのカナちゃんにショートカットの金髪だが目が前髪で隠れてしまっているいわゆるメカクレノのサキさん、しっかり者のメイド長の茶髪ロングのカレンさん。


「朝の仕事もあるから二人は先に食べ終えてそっちに行ってるわ。交代制で毎日朝と夜は一人がきて残りの二人は仕事をしてるわ。昼は三人ともいなくて寂しいんだけどね」


「そうなんだ。……ああ、そういえば昨日の本全部読み終えたぞ。なかなか面白い話だな」


 少し沈んでしまった空気を換えるように話題を出した。


「え! もう読んだの? あんたこの国の文字読めないんじゃないの?」


「お、おう。何となく覚えやすくてな」


 実をいうとこの国の文字は日本のカタカナに近いというかほとんど同じだったのだ。どんなものかというとカタカナの文字に線が一本多いとかそんな感じである。


 小さな違いは『ゃ、ゅ、ょ、ー』は使われないというところあたりだ。


「あんたすごいのね。もっと馬鹿だと思ってた」


「失敬だな! 義務教育は受けたよ一昨日までな。……ところであの話って本当にあった話しなのか?」


 本はこの国の成り立ちを表しているようなものだった。


 内容はある何の力も持たない黒髪の少年が旅をして十人の仲間を集め、災厄に立ち向かい、命の花(マザーフラワー)という花を咲かせ、当時仲間っだったこの国の初代国王とその弟と三人でこの国を作ったという話だ。


 この話は作られたものなのか、実際にあったものなのか気になるところだ。本当だとするならばこの黒髪の少年が気になる。


 それはこの国には昨日一日見て回った限り黒髪の人間はいなかったことだ。俺の前にこの世界に来てしまった人の可能性が大いにあるのだ。


「何言ってるの? あんなの作り話に決まってるじゃない。初代国王様とその弟君が建国に関わったのはホントの話らしいけど王国の図書館とか知り合いの詳しい騎士から聞いた限りだと、この話以外でこの黒髪の人間の話が出てきたことなんて一度もなかったわ」


 興奮気味に早口で捲し立てられ、言葉をはさむ暇がない。


「――うーん、元々あった勇者の話にこの国の建国の歴史を加えて新しい本にしたみたいな事じゃないかしら。そんなこともあって一般的には作り話とされてるわ」


 本のボロさを見ればわかるが、何度も読むぐらいこの本が大好きで調べまわったに違いない。どことなく、悲しさを感じる。口ではああいっているが、信じているんだろう。


「お、おう。……そう気を落とすなよ、その黒髪の少年がほかの話は秘密にしてとか頼んだからじゃないか?」


「そうかな? そうよね。そういう考え方もできるわね」


 これはその場しのぎの言葉だが、ありえない話ではない。まず、この話はおそらく建国のことがメインではないどちらかというとこの少年の話がメインだ。


 初めは建国の歴史の本もあったが誰も関心を待っていなかったから有名な話に入れることで多くの人に知ってもらうためだったのか? それにしては作られたのが古すぎる。そのようなことをする必要が出てくるのは建国して数十年たってからだ。この古さは流石に最近つくられたようには見えない。


 怪しい点はまだある少年の情報が無くなってることだ。いくら何でも怪しすぎる。少年があまり情報を残したくなかったにせよ、王様がもみ消したにせよ何かありそうのだが……。

読んでいただきありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[一言] 読み始めてみました これからが気になりますね
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