第74話 俺の選択
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謎の女はゆっくりと歩いてくる。姿かたちはサキさんのまま、化け物のような気配を漂わせている。俺には分かった、抵抗すれば殺す気なのだと。謎の男との違いはそこなのかもしれない。あの男は俺を殺そうとはしていなかった。
いきなり俺は大きくスーハ―と深呼吸をした。
「どうしたのかしら? 覚悟でも決めたの? あ、抵抗はおすすめしないわよ私はあいつとは違って優しくないから」
そんな俺を見て女は言う。
『あいつ』……恐らくあの謎の男スカリと名乗った男の事だろう。俺がここにいる時点であいつがしくじったことが分かったのか、それとも連絡を取ったのかを知りたいが、そんなことを言うような女ではないのは目の前の殺気で分かる。
俺は冷静だった。あの時の――、ミーコを守ろうとした時とは違っていた。あの時は『助ける』その一心で、死ぬ気で走り出したが、冷静ではなかった。俺が拳を振るったところで何も変わらない、そんなどうしようもないことを分かっていなかった。
今は違う、俺は至って冷静だ。状況も良く分かる。
「付いて行く、抵抗はしない」
だから、この行動は必然だった。ここで俺が戦っても、いや戦いにすらならないのかもしらないが、何も解決しない。俺が死ぬだけだ。いや、カレンさん、そしてほかのみんなの命も危険にさらしてしまうかもしれない。
ここで、俺が付いて行けば、黒幕も分かるし万々歳だ。虎穴に入らずんば虎子を得ずとは、まさにこのことかもしれない。王女が誘拐されたら流石に事件になるし、その時に助けは来るだろう。……だから、止まってくれ……。
「フーン、素直なのね……。でも、足は震えてる。可愛い」
女の殺気が少し治まった気がする。そして、サキさんの声だったものは途中から舐めるような妖艶な声に変わっていた。いや、声だけではない。姿も別人に変わっていた。そして、同時に後ろからガタッと倒れる音が聞こえてきた。そちらを振り向くとカレンさんが倒れていた。
「な――! 」
「安心して頂戴。息はあるわ。この姿見ちゃったら殺さなくちゃいけなくなるからね。さあ、大人しくこっちへおいで」
俺は倒れているカレンさんに駆け寄ると。確かに胸は上下に動いており呼吸をしていることは確かだった。
そして、俺はゆっくりと女の方に向かって歩く。
暗闇の中、女の姿がよく見えなかったが、髪は深い紫をしている。瞳は闇の中でも良く分かる、美しい金色をしている。
「どうしたの? もしかして、見とれちゃった? 」
「うるさい、早く連れていけ……」
こういうやつらはやけに饒舌で困る。いや、情報が聞きやすいという利点はあるのだが……。
俺にはもう一つ気になる点があった。。それはローズが無事だと明言しなかったことだ。まずはローズを直接確認したい。俺たちを連れて行くと女は言っていた。だが、ローズが抵抗しないはずがない。
俺は女の後を付いて行きながら静かに祈る、ローズの無事と助けが来ることを……。
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