第73話 時間稼ぎ
ここまで来ていただきありがとうございます。
「誰だ、お前は? 」
俺はもう一度そう問う。
「な、何を言ってるんですか? 私は本物ですよ! 」
サキのようなものは髪を振り乱しながらそう必死に答える。俺にはそれは、気持ちが悪くて仕方がなかった。
「みんなをどこにやった? 」
冷静に、淡々と俺はそう問いただす。俺は分かっていた。ここでそれを聞くべきではないということを。
「だから――――」
「みんなをどこにやった! 」
そう叫ぶ。聞くべきではないからこそ、俺は聞かなきゃいけないと思った。
「……ダメみたいね。みんなをどこにやったか、ってことはこれから分かる事だから答える気はないわ」
「――!」
サキさんの姿のまま、いきなり雰囲気が一瞬にして豹変した。あの、男の時と同じように。口調からして、性別は女のようだが......。
あの時の男とは比べ物にならないくらい嫌な感じがする。足が震える、それでも俺は相手から目は離さない。
「そんなに、怯えているなら気づいたとしても黙っていればよかったのに。そうしたら、恐怖も――、痛みも感じることもなく、あなたの知りたいところに連れて行ってあげたのに」
サキさんの姿をした偽物は妖艶な口調でそう続ける。
カレンさんに目をやる、少しまだ混乱しているようだが、状況を理解しているようだ……。この殺気の中、よく冷静でいられるものだ。
「それよりも、あなたに聞きたいことがあるの? どうしてわかったのかしら? 」
謎の女はそんな事を聞いてきた。
「それが聞きたいなら、こっちの質問にも答えろ……」
「……まあ、いずれ分かる事だし……。正解は、まだこの屋敷のどこかでーす。連れて行こうと思っているうちにそこのメイドさんが返ってきちゃったから。……で、どうなのよ? 」
良かった、まだここにいるなら何とかなる。
「いや、最初から怪しかったが、きっかけは目だ」
「め? 」
女は首を傾げている。
「瞳の方の目だ。サキさん……お前が成り代わっているその人は絶対に目が見えなかった」
そう目を指さし丁寧に教えてやる。
「そんなことで? 」
「ああ、いつもどうしても見ることができなかった。おかしいだろう、前髪が目にかかっているだけなのに瞳自体は全く見えないなんて」
「全く見えなかった……」
「恐らく普段は魔法か何かで隠しているんだろうよ。どんな事情があるか分かんねぇがそれは確かだった」
「それで、私の迫真の演技の最中に瞳が見えたから疑ったってわけね……確かに私が真似られるのは外見だけだからね。そんな落とし穴もあるのね……」
ローズの居場所が分かった俺がすることはただ一つだった。
「後は、確信を持てるように、合言葉なんて大層なもんも考えたし」
「あれも、何か仕掛けがあったのかしら? 」
「いや、言葉に深い意味はなかったよ。『合言葉を言えば本物だと思われるだろう』、と思うだろうから作っただけだ。そうすれば、大胆に動くと思ったからな。それに、お前は俺がこの屋敷にいる以上、ここに来なければいけないのは想像がついたから、お前は喜んで動いてくれるんじゃないかってね。だからお前がもう一度俺の前に現れた時点でお前の黒は確信だったよ」
「あなたの、回収も言われていたし、仕方ないか……」
自分の変装がばれたことに少し落ち込んでいるかのような口調だった。
『時間稼ぎ』これは助けが来ることが分かっている分あの時より気は楽だった。ただ……
「じゃあ、聞くこともできたし。そろそろ行きましょうか」
女はそう言って近づいてきた。
俺にもう時間稼ぎをする方法がないことだった。
クソ、遅いんだよ……何してるんだよ……。俺はそう思いながらも必死に時間稼ぎの方法を考えている。
そんな中、凄まじい速さでこの屋敷に向かっている一つの人影がある。
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