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無力の英雄  作者: 覡天狐
第一章 ~二輪のバラ~

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第72話 嘘と偽物

ここまで来ていただきありがとうございます。

 俺は屋敷の中に入っていく。やっと見慣れ始めた廊下を歩く。普段と変わりのないその廊下は夜と言う闇に満たされていて、明かりはなぜか消えている。

「お化け屋敷みたいな感じだな……」

 ふとそんなことを考えていた。

 キッチンまではそこまで遠くはない、すぐにキッチンへの扉が見えてきた。


 扉の隙間からは光が漏れ出ている。トントントン。包丁がまな板をたたく音が聞こえていた。確かにそこに人の気配がしていた。

 俺は扉を開けようと手を掛けようとした時だった。


「待ってください! 、やっぱり私も一緒に行きます」

 そこには息を切らせた、サキさんの姿があった。俺を追いかけてきたのだろうか? 


「分かりました……どうなっても知りませんよ……」

 少し考えて、はぁ、とその頑固さに折れる。汗は止まらない。自分の想像があったってしまう嫌な予感がしている


「っと、その前に……合言葉おぼえてますか? 」

 そして大事なことを聞かなくてはならない。


「もちろん覚えていますよ、『ローズ様の紅茶は世界一』でしたよね? 」

 そう俺たちが合わせた言葉を言う。

「……はい、そうです」

 そう俺は答える。


「では、キッチンを見てきます。ここで待機していてください」


 俺は扉をいつも通りに開ける。

 暗い廊下で目が慣れてしまっていたのか、やけに部屋の中が明るく見える。

 厨房の方には確かに人影が見えた。


「あの、カレンさんいますか? ――カレンさん! 」

 小さい声であたりを探るが返答がない、そして勢いに任せて大声で続けた。

「ど、どうしたんですか? 急に? 何かあったんですか? 」

 奥から、慌てて、カレンさんが飛び出してきた。手には包丁を持っていた。


「ローズはどこですか? 」

 ただそれだけを聞く。それで答えは分かる。

「えっと、レン君と一緒に病院に行ったんじゃないんですか? 」

 そう何も知らないかのように答える。表情からは嘘のようなものは感じられなかった。


「そうですか......じゃあ、それって()()()()()()()()()? 」


「それは、もちろん……。サキちゃんからだけど……」

 そう言って俺たちの目線は先に集まる。


「いえ、私は確かにカレンさんから聞きましたよ! 信じてください」

 その目線を受けたサキは必死に弁明をする。


 だが、俺にはもう分かってしまっていた。どちらが偽物か。


「お前は、だれだ? 」

 そう言って、俺はサキのような何かを睨みつける。

読んでいただきありがとうございました。


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