第70話 不安は続く
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「取り合えず俺は屋敷に戻ってみます」
俺はそう言って。馬車に乗り込む。一人の兵士の方に手綱をお願いし、俺は大急ぎで屋敷に帰ろうとしていた。
「そうか、分かった。俺も一緒に行きたいんだけど……ここを放っておけないからね」
エイルさんはここで待機するようだ。正直戦力になるエイルさんについてきてほしかったのだが……仕方ない。ことはないか。ローズめちゃくちゃ強そうだし。
「でも安心して、頼りになるやつ向かわせるから。何しろあいつは俺より強いからな」
エイルさんは片目を閉じてそう言ってくれた。なんともキザな表情だったがカッコいいから様になっていた。
「それって……あの時言っていた――」
俺はあの謎の男スカリとの戦いのときにこぼしていた言葉を思い出していた。確か『俺が来るんじゃなかった』と、そう言っていた。
「そうそう、聞き耳建てた感じ、病院に敵が現れてもおかしくなかったからね。そこには多くの患者さんがいるから強い方を置いておくのは当然だったんだよ」
エイルさんはよく考えて適切に行動していたんだ。これが本物の騎士なのか……。
「もう出発できますよ」
手綱を握る兵士の方が声をかけてくれた。
「では、ミーコを頼みます」
「おう、そっちも頑張ってね」
そう言って俺とエイルさんはグータッチをする。
鼠色の瞳は遠ざかる馬車を見つめていた。何の力も持たず人を助けようとする少年。
「それは、茨の道のりになるよレン……」
男はそうつぶやくのだった。
「すいません、どれくらいで着きそうですか? 」
「そうですね、急いでますが三十分は掛かる思います」
俺は逸る気持ちを抑えながら外を眺めていた。夕日は眩しく、着くころには真っ暗になっているだろう。
俺たちは直接ローズのいる屋敷に向かっているが、エイルさんが言っていた人は病院から向かうことになるので、少し遅くなるだろう。正直その時間が怖い。あのスカリと言う男と同じくらいの力であれば俺は一瞬にして殺されるだろう……。あの男は俺を殺そうとはしていなかったが、あいつと同じ目的とは限らない。その証拠にあの偽物はローズを狙っている。
いや、俺とローズを屋敷で捕まえて、ミーコを病院で捕まえようと二人はしていたが、俺がミーコの方に向かったからそっちと一緒に捕まえようとしたという線も考えられるか? いかんいかん俺は考え過ぎなんだ。こう、被害妄想と言うか、悪い癖と言うか……。取り合えず落ち着いていこう。
ここで考えていても結果はその時にしか分からない。
それにエイルさん曰く応援に来てくれる人はなかなか強いらしい、その点においては安心できる。あんな戦いができたエイルさんより強いとかどんな化け物って感じだが、一体どんな人物なんだろう。
「間に合ってくれよ……」
そんな願いを祈りながら、馬車は屋敷に向かっている。
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