第68話 成り済まし
ここまで来ていただきありがとうございます。
簡易的なテントの中、俺は治療を受けていた。ほとんど怪我と言う怪我はしてはいなかったのだが、少し擦りむいた程度の事を診てもらった。
隣のベッドでは小さな獣人の女の子が眠っていた。軍医が言うには半日も経てば目を覚ますとのことだ。良かった。
俺たちはあの後、到着した兵士たちと合流したのだ。兵士たちが到着した時には謎の男――――『スカリ』と名乗る男は姿を消してしまった後だったのだが。
どうやら、ここに来る前にエイルさんが兵士の方に念のため連絡を入れていたらしい。本当にすごい人だった。彼は一足先に治療を終えて、この近くにある屋敷の探索に加わったそうだ。ケガも治ってないのに……。一応詳しく調べるのは後日らしく、今日は軽い偵察のようなものらしいが、あの男が何か仕掛けをしていた屋敷だ。何があるか分からない。
俺は一先ず俺は、ミーコの護衛をこの兵士の皆さんに任せここまで来た時の荷物を纏めることした。テントを出ると、もう日も傾きだしていた。すると、遠くから屋敷の探索に行っていたエイルさん率いる一団が戻ってきていた。
「お、もう平気か? 」
エイルさんが駆け寄ってきた。体には改めて軍医の方に治療を受け丁寧に包帯を巻いていた。
「はい、別に大きな怪我してませんから」
「そんなこと言うなって。はあ、ホントにお前ってやつは……」
エイルさんは呆れたように俺を見る。
「で、どうだったんですか? あの屋敷」
俺はあの見るからにヤバそうだった屋敷を思い出していた。レンガ造りで蔓だらけな割に壁自体には傷が一つもないおかしな屋敷だ。
「取り合えず、分かったのは、ヤバいってことだけだな。俺たち現場の人間じゃそれしか分からなかった」
「そうなんですか……」
「だが、まあ。あいつの言っていた通りお前たちに危害を加えるつもりはなかったのか、即死する罠とかがなくて助かったよ」
そう言ってエイルさんは笑っている。笑っているが、死ぬかもしれない屋敷に自ら確認に行ったんだ。本当に騎士の鏡のような人だ。
「そう言えば、なんで助けに来てくれたんですか? 」
俺は病院であったとき詳しくエイルさんには話していなかったはずだ。それなのにどうして?。
「いや、あの時の様子がおかしかったから。ちょっと隠れて話を聞いていたんだよ。ミーコちゃんの両親がしていた話とかね。そうそう、その話詳しく聞かせてよ」
話した時の様子がおかしいからってだけで……すごいな……なんかちょっと怖いけど。
「分かりました。えっと――――」
「そうだったのか。それにしてもおかしいな」
「何がですか? 」
「いや、屋敷に本物がいるのに成り代わってたのか。バッタリ鉢合わせていたらどうしたんだよ」
ミキさんは笑ってそう言っているが……。
「いや……でも……」
そもそもすぐに出発した馬車に追いつけるのか? どこに行くかも言った覚えはない……。『成り済ます』その能力が同じだったために同じ奴だと思っていたけど……いやな予感がする。
屋敷の一室で紅き姫は眠りに落ちていた。深く、静かな――――。
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