第59話 向かうはグドラグナの森
ここまで来ていただきありがとうございます。
病院の奥である獣人の夫婦が話をしていた。
「あなたいいの? あの子の命が危ないかもしれないのよ! 」
それ声を荒げながら話すのはついさっき出て行った小さなお医者さんの母親だろう。
「いいんだ。あの子に任せておけば大丈夫だよ」
その女性とは対照的に落ち着き、穏やかに話すのはもう一人は少し横幅が大きい獣人だ。こちらがあの子と父親だろう。
「な、何を根拠にそんなことを……」
母親は訳が分からず、困惑している。それもそうだ。あの少年の言葉を少し聞いただけで大切な子供の命を預けたのだ。気がおかしくなってしまったのかと疑われてもおかしくはない。
「君も見ただろう。あの少年の目を」
その男はそんなことを言った。
「そんなことで何が分かったて言うの? 」
「『必ず守る』と言う決意がだよ」
男はそう言うと立ち上がり、ほかの病室へと向かって行った。
その後ろ姿を見ていた、母親らしき獣人は納得してはいない様子で何も言わずに立っていた。
「でミキさん、その安全な場所ってどこにあるんですか? 」
そう話すのは揺れる馬車の中でのことだ。つい先ほど病院から出てきたのだが、またすごい速さで病院から離れていた。
「この先の奥にグドラグナの森と言う森がありまして、そこにある寂れた屋敷に行きましょう」
森にある寂れた屋敷?
「そんなとこが安全なんですか? 」
そんなところが安全だとは思えない。それよりは病院のほうがよっぽど安全に思えるのだが......。
「いえ、まずこのグドラグナの森はこの辺りある豊富なマナを吸って育った、魔の森と呼ばれる特別な森でして、ここを正しく抜けるには特別な道を知っていないと通れなくなっているのです」
マナ? 何やらファンタジーチックな単語が聞こえたがそれは後回しだ。
「物騒な名前ですけど、それって相手も知ってたら来てしまう気がするんですけど……? 」
「それは大丈夫だと思います。知っているのはごく一部な人ですから。それに屋敷にもとっておきがあるんです」
「なら安心ですね」
どうやら本当に安全なようだ。ミキさんが言うことなので疑ってはいなかったが。こうした根拠があるのは助かる。
「それにしても、どうして行きと違う馬車で来たんですか? 」
そう言って馬車を中から見渡す。行きは急いでたこともありボロい馬車で来たのだが、今俺たちが乗っているのは豪華とは言わないがそこそこなものに乗っている。
「……ああ、そうでしたね。これは詰所に行ったときにこちらの方が早いと言ってこちらを貸していただいたんですよ。もちろん乗ってきた馬車はそこにありますので安心してください」
ミキさんは少し間を開けてそう答えた。
もしかして、これ貸していただいたんじゃなくてミキさんの自腹で買っていてそれを隠そうとしたんじゃないよな。と俺はミキさんが間を開けて答えたことを疑っていた。
読んでいただきありがとうございました。
もしよろしければ感想、評価、ブックマークもよろしくお願いします。




