第58話 父親の選択
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「えっとこれからどうすればいいんですか? 」
そう尋ねるのは小さな猫耳をはやしたお医者さんだ。年は12ぐらいだろうか。こんなランドセルを背負うような年で病院にいるのには理由がある。それは彼女の腕にある痣によるものだ。女神の聖痕と呼ばれるその特別な痣は、人にごくまれに現れる特別な力らしい。俺のご主人様であるローズに現れたものとこの子以外知らないのでやはり珍しいらしい。
「安心しろ。この優しそうで、ダンディなおじさんがもっと安全な所に連れて行ってくれるらしいぞ。それに、もう護衛の衛兵が来てくれているらしいし」
笑顔で今持っている安全だと言える情報を並べる。全部、ミキさんのおかげだが俺も誇らしく胸を張った。
「そうなんですか。ここより安全な場所があるなんて知りませんでした。では、両親に一度話に行きます」
少し考えた後に、花が開いたような笑顔をみせ、また走り出して行ってしまった。
もちろん、親へ伝えておくことは必要だ。とても心配していることだろう。
「ミキさん、すぐに出られる準備をお願いします」
俺は、今の会話を温かい目で見守っていたミキさんに向けて話す。
「はい、あの子の手を離さないでくださいね」
そう言うとミキさんは外に馬車の準備をしに出て行った。
するとすぐに、おくから走ってきたミーコに気づいた。
「お、早かったな」
「お父さんとお母さんは、心配性なのでここが安全だって言って、私を捕まえようとしたんです。早く行きましょう」
こんなに可愛い娘が危険な目に合うかもしれない知ったらそれぐらいするだろう。ちょっとは話し合ってもよかったんじゃ......。
「あ、じゃあ先に行ってますね」
そう言い目にもとまらぬ速さで走って扉を抜けて行った。
そしてすぐに、大きな足音が近づいてきた。
「コラーー! 」
「ちょっと。待ちなさーい! 」
二人はどちらも獣人で、猫の耳を生やしている。毛の色も明るい茶色でミーコと同じだ。恐らく両親だろう。追ってきた二人を見てさっさと出て行ったようだ。
「君が、お兄さんか? 」
息を切らせながら、恐らく父親の獣人が尋ねてくる。少しふくよかな体形で優しそうな印象がある。
それにしても、お兄さんって紹介はどうかと思うぞ。確かに名乗ったのに。
「そうです。今は、彼女の命が危険なんです。どうかお願いします」
頭を下げる。誠心誠意。
今は一刻を争うときだ、すぐさま本題に入る。親が子を心配する気持ちもわかる。
「本当にここより安全な所があるんだね? 」
優しそうな声とは裏腹に、瞳は真剣なものだった。
「はい! 」
俺の目をじっと見つめた後重い口を開けた。
「……分かった、娘を頼んだよ」
「この命に代えても守ります」
母親の方はまだ納得していないようだったが父親に説得され一緒に戻っていった。
俺は、もう少し説得に時間がかかるものだと思ったのだが、まさかこんなに早く納得してくれるとは思わなかった。
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