第54話 警戒を
ここまで来ていただきありがとうございます。
「で、何があったか教えていただけますね? 」
ミキさんは手綱を握ったまま、振り返らずに言う。
「屋敷に、偽物のカレンさんがいたんです。それで俺が、ローズに起こった原因を突き止めてくれた先生の話をしたとたんに消えてしまったんです」
「偽物……。それで本物のカレンさんは? 」
ミキさんの顔つきは神妙なものになっている。もちろん仲間の命がかかっているかもしれないので当然だが。
「あ、そこは大丈夫です。屋敷にいましたから」
「そうですか」
ミキさんは安堵の表情になる。がすぐに切り替えた。
「取り合えず、その先生のもとに急ぎましょう」
「でも、大丈夫なんですか? このままじゃ、もし襲われでもしたら……」
正直戦闘面では俺は何の役にも立てそうにない。この世界では小さな子供にも殺されかねない。いや、ただの子供なら流石に? まずは戦闘になることを避けてほしいが、そんなに現実は甘くはない。
「近くの衛兵の詰所に向かいましょう。そこで事情を話し、護衛を頼みましょう」
衛兵の詰所……交番みたいなもんか? ミキさんが言うのだ、一応任せても大丈夫なのだろう。
馬車を急いで走らせる。朝とは違い、前に使ったボロい馬車に乗っているためか揺れが激しい。急いでいるのもあるだろうが。
すぐにコモン・バーベンが近づいてくる。流石に飛ばし過ぎな気がするが有り難い。
馬車が止まる。すごい勢いで止まったせいか身が少し投げ出されそうになった。寸でのところでヘリにつかまり何とかなったようだ。
「では、レン君はここで」
ミキさんが振り向いて言う。
「え? ミキさんは? 」
「私は、詰所に向かいます」
と言うことは少し遠い所にあるのだろうか?
「分かりました」
「すぐ、戻りますので」
そう言い残し、また馬車は走りだす。それもとてつもない速さで。これなら相当遠くてもすぐ帰ってきてくれそうだ。
急いで病院の中に入る。少し慌ただしく入ってしまったためか周りの目線を引き受けてしまうが、そんなものは関係ない。受付に向かう。
「すいません、小さい獣人の女の子の先生いますか!? 」
「は、はいミーコですね。一体どうされたんですか? 」
そう聞くのも無理はない。
「その子の命が危ないんだ? ちょっと早く呼んでくれ」
「わ、分かりました」
そう言って、受付のお姉さんは急いで奥の部屋へと消えて行った。
実際よく考えてみれば、ここが一番安全な気もする。どうすればいいんだ? こんなところに攻めてくるとしたらかなりの手練れになってしまう。いや、誘拐なら夜にこっそりされるから関係ないのか?
この子をどうしたいのか分からない以上誘拐と命を狙っている両方の線を警戒しておかなくては。
「お兄さん、どうしたんですか」
丁度、可愛らしい、ケモミミをはやした小さなお医者さんが走ってきていた。
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