第50話 考察の深海
ここまで来ていただきありがとうございます。
「それでは出発しますね」
ミキさんが手綱を握る。
王女様を載せた豪華な馬車が進んでいく。ここは魔道施設コモン・バーベンのすぐ横にある魔道病院。診察を終え、小さなお医者さんに出会いローズの発作の原因の一端を知れた俺たちは帰路につき始めていた。
馬車が進むにつれ、病院が遠のく。
お嬢様は、頬杖をつきながら窓の外を眺めている。その眼はどこかうつろで少し眠そうだ。やはり、半日とはいえ病院で検査をしていたのだ、疲れたのだろう。
「大丈夫か? 少し眠ったらどうだ」
「ん……そうする」
少し、考えたようだが、眠るようだ。
上の棚にあった、毛布を渡す。一応、何がどこにあるか確認しておいてよかった。
そして、それを素直に受け取ると、座りながら瞼を閉じた。すると、すぐにスースーと寝息が聞こえてきたようだ。よっぽど疲れていたのだろう。
俺も外を覗く。空の景色も、街並みもまだ見慣れない。少しは慣れたが、やっぱりまたあの空が見たい。
そう感傷に浸っている場合ではない。俺は考える。ローズの一件を。まず、一番怪しいのはあのカエル枢機卿だ。彼がこの屋敷を訪れた日にローズの発作は起こった。これは明らかに怪しい……。が、おかしな点も少しある。それは、昔から交友があったはずなのにどうしてあの日にしたのかだ。それに、別にローズに術を掛けて何かしらメリットがあったようには思えない。ほかに容疑者がいないのは確かだが、黒と確定するには弱い。
次に、どうして急に治ったのかだ。可能性は二つある。一つ目は、効果時間が切れた。もう一つは何かがきっかけでそれが解かれたか、だ。後者の方の可能性が低いことから考えると、前者のように思えるが……途中で切れるような中途半端なことをするのか?
結局何が目的なんだ? 王女暗殺か? でも、そんなことをして誰が得をするんだ? それに王城にいないローズは確かに狙いやすいが――――戦闘能力を見るにあまり狙われなさそうに思える。
頭がパンクしそうだ。取り合えずまた今夜また考えてみることにしよう。
そう思った時だった――――何ら普通の事だった。窓から差し込まれた光が俺のペンダントを照らしていた。
このペンダントは確か身に着けている人の精神を正すみたいなものだったよな……これってつけている者だけじゃなくて、それを付けた人が触れた人も対象者だったら……
思い出す……俺は確かあの時ローズの手を握っていた。無意識に。あの雨の日のように。
恐らくローズが元気になったことはこれが関係しているだろう。確かアネモネさん……いや、青いローズに鑑定士に見せたら詳しく分かるって言っていたな。また、調べてもらおう。
馬車は屋敷に向けて走る。
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