第42話 人騒がせなお嬢様
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「あのミキさん……」
あれからずっとミキさんの雰囲気は暗いままだ。何が理由でミキさんが落ち込んでいるのか良く分からない。
そもそも、もし仮にあの言葉の何かがきっかけで、ローズの発作が起こったとしてそれを救う手立てはあるのだろうか? 心に傷とは総じて治りにくいものだと思う。過去のトラウマを治すには必ずもう一度その傷に触れなければならない。それをどうやって乗り越えるのだろう。
「大丈夫です。必ず助かりますよ」
俺の表情を見たのか俺を励ましてくれたようだ。
そして、向かった時とは違い、ほとんど無言のまま屋敷に向かう。
「さあ、着きましたよ」
数時間ぶりの屋敷だ。
最初にローズの部屋に向かった。ミキさんは何やらメイドの人たちに話があるらしく。俺はローズの見張りも兼ねているそうだ。やはり、まだローズは目覚めていないらしいが、この昏睡状態はと発作とは何か関係があるのだろうか? もし関係がなければ一体何が原因なのだろうか。
そっとローズが眠っている部屋の扉を開け、ゆっくり音をたてないようにして閉める。
「失礼します」
耳を澄ますと、スースーと寝息が聞こえる。朝は少し苦しそうな様子だったが、今はそのような様子もなく静かに眠っている。
熱があるのかいつの間にかおでこにタオルが掛けられており、そばには水の入った桶が置いてあった。
俺は側の椅子に腰を掛ける。
「俺に何かできることはないのか……」
まず、治そうにも目が覚めないことには何も始まらない。
そうだ、俺は昔もこんな事があったな。あの時も――――病院のベッドの横で、こうして座って目が覚めるのを待つことしかできなかった。俺は無力だった。泣いて縋ることしかできなかった。俺はまたそんなことしかできないのか......。いや違う、今度こそ必ず助ける。必ず。
意識せずローズの手を握る。
「絶対、助けるからな」
そう、聞こえるはずのない言葉を、聞こえるはずだと信じて語る。――――――その筈だった。
「レン……? 」
聞こえるはずのない声が聞こえてきた。
「お前……目が覚めたのか! 」
「何言って……?」
ゆっくりとローズは上体を起こした。おでこに乗せたタオルも重力のままにベッドに落ちていく。
バサッ
あまりの突然のことに思わず抱きしめてしまった。
「ちょっと、離れなさいよ……」
「良かった。本当に良かった」
少し、目に涙を浮かべながら、本の数時間の再会を喜ぶ。
「ねえ、苦しいわよ……今すぐどかないと消し炭ね。はい3・2・」
「すいませんでした」
一瞬で冷静に戻り離れる。
「これって、私また変なことになってようね。あんたも大げさよ。こういうのよくあったし」
周りを見渡し現状を確認したローズはそう言うが、いつも以上の発作だったことや、かなりの時間眠っていたことはまだわかっていないようだ。
ローズはまたゆっくりとベッドから出ようとする。
「ねえ、今何時? まだちょっとやらなきゃいけないことあったんだけど……あ、 」
それを止める間もなく、ローズはベッドから一歩出ようとして力が抜けたように倒れそうになる。――――がそれを寸でのところで支える。
「まだ、もうちょっと休め。そうだ、飯持ってくるから。やらなきゃいけないやつも、また明日死ぬ気でやればいいから」
「でも………分かったわ」
ローズは何か言いかけたが俺の勢いに負けてかローズらしくなく素直に俺の言うことを聞いてくれるようだ。
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