第30話 ローズと客人
ここまで来ていただきありがとうございます。
暫しの無言を耐えきり、待ち望んだ部屋に到着した。ミキさんにはできるだけ急いで人を案内している時に行う話について教わりたいと思った。
「こちらへおかけ下さい」
そういかにも高そうなソファに促す。
俺は客室にもあまり来たことがなく、その装いに少なからず驚いていた。その部屋は、今までの部屋同様あまり使われてきていなかったのにもかかわらず綺麗に掃除されていてほこり一つない。
それよりも目を引くのは部屋の豪華さだ。この屋敷はかなりの大きさがあり、この国の王女の屋敷となっているにもかかわらず、そこまで豪勢とか華麗とはお世辞にも思えないものばかり。
どちらかと言うと質素さを感じさせる内装の部屋が多い中、この場所だけは違っていた。豪華絢爛その言葉が似合う、これまでの部屋とは趣向の違う王女に相応しいすごい部屋だった。
「この部屋は来るのは初めてですか?」
こちらの驚きに気が付かれてしまったのか、そんな疑問が投げかけられる。
「はい、恥ずかしながら」
「ローズ嬢はあまりこのような煌びやかなものはお好きではないようですが、彼女がお会いになる貴族の人達は時に簡素な室内に不快感を示す場合がありますから、客室だけは好まれるように作っているとおっしゃっていました」
「そうなんですか。王女様と言う立場も大変なものなんですね」
貴族の話についても詳しくは分からないが、歴史的に見てもあれな貴族は多くいたと言う話は聞き及んでいる。王女と言う立場は何ともストレスがたまりそうだ。自分の住居においても配慮しなければいけないなんて、考えたくもない。
そうこうしているうちに部屋がノックされた。
コンコンコン
「失礼します。ローズ様がいらっしゃいました」
一度腰を下ろしていたカエル枢機卿は立ち上がり、出迎える準備を整える。
自分は二人の視線の邪魔にならないように取り敢えず端っこに移動を。
直ぐに扉は開かれる。
「お久しぶりです。カエル卿。お元気そうで何よりです」
「それはこちらのセリフですよ。ローズ嬢。いや、本当に良かった」
二人は朗らかに微笑み談笑を始める。年齢こそ親子ほど離れているが旧知の仲と言った様子。
邪魔にならないように隅っこを静かに歩いて、扉へと向かう。
扉の前で待っていてくれたいたミキさんと共に静かにお辞儀をして、音も立てず開閉する。
そしてお茶を運んできたカレンさんが部屋の中へと入っていく。すごい連携技だ。俺が案内し、ミキさんがローズを呼びに行き、連れてきて、その間にカレンさんがお茶の用意をする。これが少数精鋭の力。
何もすることがないので、中から何かあったときのために扉の前で待機しておく。曲がりなりにも、腐っても、名ばかりでも護衛という役職がついているのだ。
すると、中からローズが楽しそうにしゃべる笑い声が聞こえてきた。防音がしっかりしていないのか、お嬢様の声が大きすぎるのか、言及は避けたいところ。
「レンー。ちょっと来て―」
突然中のローズからお呼びがかかる。どうせろくなことではないので、すごく行きたくなかったのだが、その気持ちを押し殺し、扉へ手をかけた。
「いかかがいたしましたか? お嬢様」
スルリと彼女の座る椅子の横に現れて見せる。
もちろん顔は笑顔を作り上げて。
「こいつよ、こいつ。見ての通りちょっとふてぶてしいけど基本的に何でも出来て便利なのよ」
「あ、ありがとうございます」
「ははは、よほど気に入られているようですな。よもや恋人関係ではありますまいな」
「あはは、さすがカエル卿、面白い冗談ですね。このような駄犬、ペットにはちょうどいいですが、恋人なんてとてもとても」
「…………」
いくら何でも酷い。自分自身王女と釣り合う人間だとは微塵も思っていないが、ペットとは言ってくれる。しかし、主人を立てるのが従者の役目、いつか必ず仕返しを果たすと心に決めて、ぐっと堪える。
「――で、もうよろしいでしょうか?」
「あ、うん、もう良いわよ」
手をひらひらしてどっか行けと示している。
大丈夫。仕事仕事。最初に一応評価はされていた。これは恥ずかしくて照れ隠しをしているだけだ。そう思うことにする。
「では、どうも、失礼、しました!」
バタンッ!
最低限の抵抗として少し乱暴に扉を閉めておく。これぐらいは許されるはずだ。
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