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無力の英雄  作者: 覡天狐
第一章 ~二輪のバラ~

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第14話 馬車の中で

ここまで来ていただきありがとうございます。

 流れ行く景色を馬車の窓から乗り出して楽しむ。車よりは遅いから街並みをよく見れる。最初はどこに行くのかと緊張していたが、もうそれは置いてきた。


 まだまだ見慣れない空に滲む青く大きい太陽。時代感を伝える建築物。人種をある意味超越した人々。


 本当に俺のいた世界とは大きく違う。髪の色も、魔法も、なんとなく実感はなかったが、こうして生きている人々とその営みを見れば、抱くものもある。


 ……普通はどんな感情だろうか? 自分の意思もなく突然知らない場所、それもこんな空想上の世界に連れて来られたら。


 二極化すると思う。慌て戸惑うことは共通して、その後に元の世界への帰還を求めるのか、それとも新たなこの世界に順応するのか。


 ――俺は。


「今度はどこに連れて行くんだ?」


「凄い変わり様ね......そんなにコロコロ使い分けるぐらいなら最初から敬語使わなければいいのに」


「いや、人の目とがあると流石にまずいからな」


 馬車に揺られてはや20分ほどだろうか暇になってきた。ちょうどいい、今のことでもう少し聞きたいことがあったので聞いてみよう。


「そういえばさっきの話の続きなんだが魔法の利点と魔術の利点を教えてくれ」


「急に真面目になったわね……。まあいいわ。まず魔法の利点はイメージを使うから式を立てる工程がないのよねその分早く攻撃できるし、魔術は工程がある分細かい操作とかができるわ。ほかにもいろいろあるんだけど重要なのはここね」


 スピード重視の魔法と操作重視の魔術か。個人的に速度は重要だと思う。先手を取ることの重要性は分分かるが、操作精度の高さはどういったところで役立つのだろうか?


「――でも、卓越した魔法使いは細かな操作もできるし、魔術師もものすごい速さで術式を立てられるのよね。言ってしまえば結局そんなに変わらないのよね……」


「変わらない……そうか」


 出来ることは同じであればその後は使い手次第と言うわけだ。そうであるなら、やはり、自分に向いている方を選ぶべきだが。


「けど魔術は術式を勉強しなくちゃいけないのが面倒なのよね。その分想像がしづらいものでも覚えちゃえばできるんだけど」


 これは大きい。想像力には自信がある。物事が悪いように進む予想などは特に具体的にイメージできる。これが魔法にも使えるのであれば魔法に進んでも良い、これで難しそうなら魔術に行けばいい。勉学もできない訳では無い。


 利点はよく分かった。次はもちろん


「じゃあ、デメリット……じゃなかった、欠点は何なんだ?」


 通じない横文字を言い換えて尋ねる。


「欠点なところはね、魔法はイメージしなくちゃ発動できないからそれを止めらてると厳しいの。たとえば頭の中をぐちゃぐちゃにする魔法とか魔術に弱かったり仲間が目の前で殺されて動揺したりするだけで影響してくるわ。そのための訓練とかするんだけね」


 精神的影響が大きい。メンタルの弱い人間であれば避けたほうが良いだろう。


「訓練……ね……」


 そして、目の前で殺される状況……。


 想像していたが、冒険者制度のないこの世界での争いとは人同士の戦い。戦争。人間の歴史は戦争の歴史とは誰の言葉か忘れたが、科学が発展せずとも魔法が武器になるなんてのはあまり考えたくなかった。


「魔術は詠唱が必要だからそれを止められるとダメなの。喉を潰されたりね。術式を立てなくちゃいけないから魔法と同じく動揺とかして式をうまく構築できないと使えないけど、常日頃使っていれば魔法の想像よりは動揺してもなんとかなるみたい」


「なんとなく魔術の方が弱そうじゃないか?」


 速度に、多い弱点。今の単純な感想としてはこうなってしまう。


「そうかしら? けどその分魔術はその式を杖や指輪に刻んでそこに魔力を流してすぐに使えるものがあったり便利よ。列車を動かすのにも利用されていたりするわ。そう考えれば魔法は戦闘よりで魔術は生活にも役立っているわ」


 よかった、魔法と魔術は傷つける以外にも使われている。


 生活と戦闘としてみても利点とか欠点が色々ありそうだ。取り合えず戦闘での欠点があったとしても戦闘以外の面に役立つことは大きい。


 ―――いや待てよ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「これ二つとも習得するのはダメなのか?」


「両方? おすすめはしないわ」


「どうして?」


「どうしてって、昔からそうなのよ。魔法使いと魔術師は仲が悪いの。何で仲が悪いって明確な理由は知らないけど些細なことでバーベンの偉い人達はいつも嫌味を言いあってるわ。」


 よく分からないが、古くからの長い因縁でもあるのだろう。しかし、明確な理由は知らない……。何か怪しいが、王女で勉強してそうで偉い人の喧嘩を見てるぐらいのローズが知らないのであれば俺ではどうやっても調べられなそうだ。


「――いないわけじゃないのよ。今までで確か5人だとか6人だとかいたって記録はあった気がするわ」


「取り合えずなろうと思えばなれるってことだな。俺は別に嫌われてもいいし、両方とるかな」


 別に知らない人達のよく分からない争いには興味ない。差別されようが構わない。ローズの後ろ盾があれば明確に嫌がらせを受けることもないだろう。


 何より、これが一番強くなる方法だと思う。


「ふーん。……まあ頑張りなさい」


 ローズは否定せず、それどころか応援の言葉を投げてくれた。忠告はしてくれたが、止めるまでの問題ではないということなのか、それとも……。


 窓から外を覗く薔薇の姫。その先に別の誰かを思い描いているようで。


 再び車内は静まる。


 それから数分して馬車が止まった。そして馬車から降りた俺たちが見たのは少しさびれた道場らしき場所。

読んでいただきありがとうございました。

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