第13話 教えて!ミキ先生!!
ここまで来ていただきありがとうございます。
「これで魔力の適性が分かるんですか?」
新しく運ばれてきたのは、先ほどとは少し大きさが小さい水晶玉。
「これに手を置いてみて」
検査と称しながら手を置くだけで判別できるのはなんとも簡単だ。感触としては先程と似ているが、こちらは触っているとほんの少しだけ温かくなっていく気がした。
そして魔力量が多くないためか、やや時間がたって水晶玉が光りだした。こっちは確かに光を感じることができる。この部屋の電気といい勝負だ。
それも色味も鮮やかで、生きているみたいに時々に姿を変えてみせる。
勝ち誇った顔で、二人に視線を向けると――。
「こ、これは!」
「はい! お嬢様」
何やら盛り上がってる様子。先程とはうって変わって期待の持てそうな反応だが、どうなんだ? 結構凄いのか? 素人の俺からでもカラフルでなんか強そうに見える。
「レンって凄い!! すべての属性に適性があるわ。こんなのあのお話の英雄と同じ! 初めて見た! まあ、あの英雄魔法結局使っていなかったけど……。じゃなくてこれなら何でもできるわよ!」
興奮した様子で近づいてきたローズに気圧される。水晶に置いていた手を捕まれブンブンと振られる。ここまで喜ばれればこっちまで楽しくなる。
「はい、この世界には火、水、風、土、雷の属性魔力と光、闇、そして無の非属性魔法を合わせた8つの魔力適性があります。基本的には属性から一つ、そして非属性から一つの二つをもって生まれることが普通です。ですがレン様はそれらすべてをお持ちのようです」
「本当ですか? 良かった。魔導士ってやつになっちゃおうかなぁ」
あまり良くわからなかったがどうやら凄いらしい。何でもできるという事だけは分かったが、詳しいことはおいおい教えてもらえるのだろう。
俺がそう息巻いているとローズが酔を覚ますようにあることを思い出させてくれた。
「――あれ、レン魔力量少ないからまともに魔法使えないんじゃ……?」
そうだった。神は二物を与えたりしなかった。こんなのチート能力の意味がない。そもそも適正があるってことが俺のチートなのか? これだけではないことを祈る。
それに全く使えないということでもないだろう。ただ何度も使えないだけで……。
「まあ、……すべての魔法が使える、使えるようになれる? ってことが分かっただけで満足です」
前向き思考が一番だ。学ぶ前から欠点を見続けるのは耐えられそうにない。
「いえ、厳密に言うとすべての魔法を使えるわけではないんです」
「え? すべてに適性があったら理論上は使えるんじゃないんですか?」
当然の疑問だ。
苦い顔をしているミキさんは諭すように続ける。
「基本属性は住む地域や一族によって違うところがあるんですよ。例えば北の寒い地域に住む人は水の適性が氷だったり、エルフの一族の一部は土の属性が木だったりするんですよ。それでもほぼすべての属性の魔法を覚えられますよ」
魔法というものは住む地域によって自然環境の影響を受けるのか。
“厳密には”という言葉にはそういった意味が含まれていたみたい。この世界に存在する魔法全ては不可能らしい。
一般的なものは全て覚えられるのであれば、ほとんど気にならないが。こういう丁寧過ぎるところは個人的に好感が持てる。
「ありがとうございます。詳しいことはいつか本か何かで調べてみます」
「ちなみに私は火と光の二つよ」
「そんな感じしますよね」
聞いてもいないことを誇らしげに教えてくれるお嬢様。流れるように次の話に進む。
今のうちに魔法について聞けることは聞いておこう。
「その火とか水ってのは想像できるんですけど光、闇、無ってどんなものなんですか?」
属性と非属性。そうわけられていたが、どういったものなのだろうか。
「はいはい、私が答えるわ。光と闇はほか国では陽、陰って呼ばれているとこもあって光は支援って感じが一番強いわね。回復治癒魔法もこの中に入るわ。それで闇は妨害に近いわ。それであんまりいないけど毒魔法もこの中に入るわ。無魔法はよくわかっていないんだけどそれ以外って感じね」
想像していた通りだが、回復系や毒系の魔法も含まれているらしい。大雑把な区分だが、言いたいことは伝わった。ゲームなどにあるバフデバフもそうだが、形としてあまりイメージしにくいもの。
「そう言うことですが、ほかに聞きたいことはありますか?」
元気よく説明を勝って出てくれたローズの後ろで、黙って頷いていたミキさんが続きを促してくれる。
なんか先生っぽい。
「はい先生、さっきから気になっていたんですが、魔法使いと魔導士って何か違いあるんですか?」
俺は魔法使いと言っていたのだが、みんなは魔道やら魔導士と言っていたのだ。一応通じていたのを見ると意味は分かっていそうではあるが。
「ああ、その事ですか。結構複雑な事情が関わってきますが、いい機会です説明しておきましょう」
複雑な事情。一応説明するところを見るに重要で面倒そうな何かがあるみたいだ。ローズは……どこかつまらなそうな表情。実はそんなに重要ではないのかもしれない。
「――まず、魔導とは魔法と魔術の両方をまとめて大きなくくりに入れたものを指します。魔導士と魔法使い、魔術師もそのようなものと思ってくださってかまいません」
「はい、魔法と魔術の違いは何ですか?」
やっぱり教師と生徒っぽい。
「はい、良い質問ですレン君。まず魔法とは詠唱を必要とせず自身の想像の中で構築するものです。そして魔術とは詠唱などを使用してイメージ度外視で構築するものです」
「イメージをそのまま生み出す魔法と、式をたてて生み出す魔術って感じですか」
簡単に言うならある数式を『1+1=2』と表すことと『いちたすいちはに』と表すようなもの。表している内容は同じだが、その在り方が違う。……。余計に難しくなったかも。
難しい説明ではあったが、大体そんな感じだろう。
そして、一番気になることがある。
「それってどっちが強いとかあるんですか?」
魔法と魔術による違いだ。特に強弱があるのであれば、そちらの方が習得の難易度が高くても選ぶべきだと思う。
「ほとんどありません。が、やはりこれも全く同じではありません。魔術は必ず自分の出せる一定の威力が出ますが、魔法はイメージによって毎回多少強弱の波があります。選択は好みですね」
安定的な魔術ともしかするとちょっと強い時や弱い時がある魔法。
これなら自分が向いているほうを選べばいい。
ゲームであれば後者一択だが、この現実であればどうするべきなのか……。
答えは出ないまま、出発の時間がやってくる。
「そろそろ、向かいましょう。気になるところがまだおありでしたら道中で説明いたします」
また馬車の旅が再開された。
読んでいただきありがとうございました。




