第111話 三時間目 いいえボタンあっても押せない
「……」
「……」
「……あの、何か言ってください」
「君は単純だな」
俺は今、何もない草原の上、魔法の特訓をしていた。
先生は今日中に蝋燭ほどの火を低位魔法と言えるものにしろと言った。俺は不可能だと思った。だけど、口答えしても怖いだけなので全力で取り組んでいた。結果はもちろんほとんど変わっていない。理科室のガスバーナーほどにはなった気がするが、これではまだまだらしい。
コツを聞こうにもこれぐらいの事のコツなんてないらしい。ちなみに先生は魔法を教えてもらって一日で高位魔法を使えたらしい。天才ってどこの分野にでもいるよね。
そして今、気分転換に他の魔法を試していたのだが……
「これ……出来てますよね?」
「ああ、雷の低位魔法『ロー・ナム』。相手を痺れさせる魔法だな」
俺の掌の上で、微かに雷光が走って見える。よく見なければ分からないが、電気が放電し続ける方が珍しいだろう。
「いや出来ましたね。誰かさんのお仕置きのせいでイメージが冴えまくりましたから」
「いめえじなるものは知らんが、結局使えるようになったんだ。ありがたく思うべきじゃないのか」
「はい、ありがとうございました」
とんでもなくいい笑顔でお礼を言う。
「だが、こうなってくると…………やはりあの手が一番手っ取り早い気がするな」
腕を組んで金髪の魔女は何やら呟いている。良く聞こえないが、あの表情を見るにろくなことではないだろう。
「あの先生? 次はどうするんですか? やっぱり火の続きですか。ですよね」
一縷の望みをかけて伺う。嫌な予感がするからだ。
「そうだな、お前にはすべての魔法を受けてもらう」
「死にますよ?」
「安心しろ。そのあたりは何とかするだろ……お前の生存機能か何かが」
「死にますよ??」
目を見開いて抗議する俺を意に介せず話を続ける。
「お前の魔力の適性は多くて形にしずらい、恐らく常人なら魔法は使えなかっただろう」
「はい」
「だが、お前は想像力が中々に高いと見た」
「はい」
「だから、体に浴びて、魔力に直接形を教える。想像力も同時に高められる」
「…………」
「と言うことでお前は魔法を受ける。分かったか?」
「分かりません」
全然分からん。言ってることは分かるんだけど、どうにも俺が魔法を受けるように聞こえる。多分先生もっと他に方法考えられるでしょ。
「お前の魔力の適性は――――」
「あああ、分かりました。ゲームのいいえ押したら同じ言葉を繰り返すNPCじゃないんですから繰り返さないでください」
「? 良く分からんが。納得したということだな」
「納得はしてませんよ……」
「そうか……コホン。お前の魔力の――――」
先生はワザとらしく咳払いをしたかと思うとまた一から説明を始めようとする。
「してます。してます」
今日の午前はこうして終わった。明日からはとんでもない目に合うのだろう。死なないように頑張ろうと思う。そんなことが憂鬱だけどどこか楽しみに思う自分に戸惑いながら屋敷に戻った。
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