第107話 爆弾投下
「お! 出た」
俺の掌には蠟燭の炎程度の火がゆらゆらと燃えていた。
あれから一時間程経っただろうか? 俺の中で一番一番イメージが強い火の魔法を出すことに成功した。魔力というものを感じ、どうにか手に集められたのは良いが、そこからが大変だった。俺の魔力は全ての属性に適性があるせいか、火を生み出すのに強いイメージが必要だった。本来なら、湖から一つしかない川に水を流すだけの作業を、いくつも川があるせいで一本に流すのが難しくなっているとのことらしいが俺には良く分からない。
それによって、まだほかの属性は出来てはいない。最近炎の海に飲まれそうになった甲斐はあったということだろう。
魔法は難しかったが、魔術は式を作ればそれに基づいて流れるので先生的にはこっちの方が向いているらしい。その分、覚えるのが大変なような気がするが……。
「出来たのか。今日中には無理だと思っていたが……」
「どうですか? すごくないですかこれ!」
あまりの嬉しさに、小躍りしてしまう。もちろん、それによって集中が乱れ炎は消えていく。
「あ……」
「……今日はここまでだ。さあ、私の部屋に戻るぞ」
ソフィア先生は呆れながら本を閉じて、立ち上がる。そして、何の動作もなしにこの部屋の扉を出現させる。どうやったんですかそれ??
先生の部屋に戻ると時計は丁度終わりの時間になっていた。午後からは、屋敷の仕事があるが、もう少しここに居座っていてもいいだろう。遅れたとしても、俺の昼食の時間が無くなるだけなのでそこまで大変なことにはならない……と、思う。
「先生、紅茶でも入れましょうか? ローズから『おいしい』の言葉はいただいてますよ」
「そうか、では頼もうか。そこの、棚にティーセットがあるはずだ」
その棚には少し、埃が掛っていたが、美しい高価そうなティーセットがあった。
「先生こういうの買うんですね? もしかして自分で入れてたりします? でも、それじゃこんなに埃かぶってないか」
「ああ、それは。ローズがプレゼントしてくれたものだよ」
「そうなんですね。そう言われると、あいつが買いそうなやつだなこれ……」
俺は、黙々と紅茶の用意を進める。最近も定期的に淹れている、いや、淹れさせられているから腕もメキメキ上達した……はずだ。
「ほう、悪くない。ローズよりは幾分か劣るが、取り合えず及第点の味には達している」
「ちょっと厳しいですね。まあ、あいつの入れるものと比べるとそりゃ負けますけど……」
日が頂上に懸かる少し前。この時間の紅茶は特に美味しい。
紅茶に嵌ったのはあっちの世界と比べ、この世界の娯楽のなさが起因している。前は、暇や空き時間を見つけるとすぐにスマホを触ったりゲームをしたりして過ごしていたのだがこっちの世界にはもちろんそんなものは存在していない。だが、それもまた良い事だったのかもしれない。
そう優雅に紅茶タイムを楽しんでいた俺にとんでもない爆弾が投げ込まれた。
「そう言えば、お前はローズの事が好きなのか?」
俺は紅茶を盛大に吹き出した。それはもう綺麗に。もしこの部屋に太陽の光が差し込んでいたら、虹が掛かっていただろう。
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