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無力の英雄  作者: 覡天狐
第二章 ~終夜の舞踏会~

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第106話 一時間目 魔力

「んんっーーーー!」


「そう叫んでも、魔法は出ないぞ」


 俺は顔を真っ赤にするほどに力んでいた。もう、かなりの時間こうしている気がする。それに、そうしろと言った張本人は興味がないのか、本を片手に寝転んで適当にヤジを飛ばしてくるだけだ。


「ああーーーーもう、何かコツとかないんですか?」


 遂に投げ出し、不本意ながら助けを求める。


「やっと根を上げたか。なかなか持った方だが……遅いな。もっと早く聞いてくれ」


 そこらで寝そべって本を読んでいた金髪の美女は本を離し、俺の方を見ていた。


「いや、聞くの待ってたんですか……」


「ああ、そうだが?」


「性格悪」


「なんだ、もう教えてやらんぞ」


「……すいませんでした」


 口角を無理やり上げて、渾身の笑顔で答えてやる。


 何もない草原の上。ただ二つの人影。日は陰る事もなく、天候が変わることもない。俺は今、ソフィア先生から魔法を習っていた。いや、これから習うのか?


「初めに言ったことを覚えているか?」


「そりゃ、その事を今までしていましたからね」


「そう怒るな、すべてが無駄だったわけでもない」


 そう言いながら、上体を起こす。大きく伸びをすると、めんどくさそうに俺の目を見る。


「さっきも言ったが魔法の発動に一番重要なのは『想像』だ。そうは言っても、さっきの誰かみたいに想像しているだけで、急に魔法は出ない。いきなり何もない空間に作り出すのは難しいことなのもあるが、魔力を使えていない。想像が設計図とすれば、魔力は材料だ。設計図がいくら精密で分かりやすかったものだとしても、材料がなければ作れるものも作れない」


「それは、分かりましたけど……。そもそも、その魔力ってどうやって感じるんですか? 」


「感じ方は人それぞれだからな。僕の魔力で揺らすことは出来るかもしれないが……やるか?」


「痛いのは嫌ですけど、それが一番手っ取り早そうなのでお願いします」


 渋々、先生の方に歩き、手が届く距離に座る。


 先生は俺の胸に手を置くと、静かに目を閉じる。


「ほんとにやるんだな? 結構つらいぞ」


「はい! 一思いにっ―――――」


 言い切る前に、変化は起こった。頭痛に眩暈が起こったかと思うと矢継ぎ早に途轍もない嘔吐感に襲われた。気持ち悪い。


「――――んっぷ。っはあ、はあ、はあ」


 喉の途中までせり上がった内容物は、どうにか抑え込めたようだ。今だ、頭ははっきりとしないが、すぐに先の症状は治まっていた。


「こんな感じだ。どうだ、分かったか?」


 そう言うと胸に置いた手を離す。


「よく、分かりません、がっ、分かり、ました」


 俺は、治まった気持ち悪さの後味に、胸を抉りたくなったが、どうにか抑え込んで地面に寝転ぶ。深呼吸をする。


「お椀に入れた、水を揺らし、すぐに正常にするのは難しいがどうやらうまく行ったみたいだな」


 ソフィア先生はノソッと起き上がると、寝転がる俺に、占い師に手相を見せるように掌を見せてきた。


「魔力が掴めると後は、道と、場所だ。まず魔力を感じ取れ、それが腕を通り、掌に集る。なぜここかと言うと、一番人間が思い通りに扱える箇所だからだ。慣れれば、魔力の流れは感じずに発動できるようになる」


 その言葉通りに、先生の掌には黄色い塊が浮いていた。その眼は、こんなこと簡単だろう? と言っているようだ。


「頑張ります……」


 俺はそんなことを簡単に言う鬼畜教師が嫌になって目を閉じた。

読んでいただきありがとうございました。


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