第105話 授業のチャイムはそよ風
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朝食を済ませる。今日は青いローズとの食事だったが、いつもと変わらずに時間は過ぎた。
ダイニングを出て、自室に戻り、コモン・バーベンへの準備をする。と言っても持っていくものはなく外用の服に着替えるだけだ。ここで普段着ている服は汚れてもいいものらしく、外出用の方は汚れにくいようにできているらしい。よく見れば、細かな意匠が違うらしいが俺には同じに見える。
遅刻をするとトンデモナイ目に合いそうなので余裕をもって屋敷を出る。
街は今日も、世界の始まりを称えるように生き生きとしている。朝からこの国は多くの人々が活発に生活している。そんなところは何処の世界でも同じらしい。
屋敷の近くの人は俺の黒髪に見慣れたのか素通りだが、コモン・バーベンに向かうにつれて俺の姿をジロジロ見てくる輩は増えてくる。その眼は、奇怪なものを見るようなものもあれば、憧れるものを見るキラキラとした羨望の目なんかもある。そんな目は大抵子供だが、あの英雄の物語の影響だろう。だから、俺はそんな子供たちに――――笑顔で大きく手を振ってやるんだ。
「失礼します」
俺はチョコレートみたいな扉を開けて入る。
「早いな。もう少し街の子供たちと遊んでいても良かったんじゃないか?」
書類と向き合っている金髪の美女はほんの一瞬俺に目を向けたかと思うとすぐに、書類に戻してていた。
「遊んでませんよ。手を振っていただけですよ。……見てたんですか」
よく考えたら。恥ずかしくなってきた。
「そう顔を赤くすることでもないだろう。子供は国の宝だ。遊んでやらん理由がない。もっとも僕は結構だが」
「そんな感じしますね。では、時間まで俺は昨日片付けたはずだったものを片付けておきますね……」
俺はそう言って、昨日綺麗に纏めておいた、本と書類を再びまとめることにした。恐らく、これが元通りになるころには予定の時間になっているだろう。
「懲りないな君は……」
「ソフィア先生ここ室内ですよね……?」
部屋の片づけと同時にソフィア先生の書類の方も終わったらしく、その後、俺は先生に連れられて外に来ていた。いや中なんだけど。
「ああ、コモン・バーベンの中だ」
「これどうなってるのか聞いてもいいですか?」
「本物に限りなく近い偽物だと思っておけばいい」
「はい、わかりません」
「それでいい」
俺は今だだっ広い平原に立っていた。清々しいまでの晴天に、空気は澄み切って心地いい風が頬を撫でる。見渡す限り果てはなく、ここにはただ二人が立っているだけだ。
今、開けて入ってきたはずの扉すらなくなっている。だけど、帰る方法はあるのかなんて気にはならない。
「さあ、授業をしよう――――少年」
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