第101話 日常を過ごす街で新しい発見
ここまで来ていただきありがとうございます。
「それで少年……何をしているんだ?」
「何って、部屋の掃除ですが?」
俺は地面に散らばった、本や書類を纏めていた。この国の紙の質はあっちの世界に比べるとやや劣るが中世ヨーロッパの時代風な世界においては場違いなほどうまく作られている。と、思う。だってその時代の紙の質とか知らないし。
「この本は、これとこれと同じで、この書類はまだ、先生のサインがしていないから……」
「余計なことはするな。これでも僕は、どこに何が置いてあるかわかっているんだ」
ソフィア先生は額に手を当てて、やれやれと呆れていた。が、何か怪しい。
「……ほんとですか?」
「あたりまえだ。僕は嘘をつかない……なんだ、その眼は。疑っているのか?」
「いえいえ、そんなことはないですよ。……コホン、では問題です。この書類の要件は何?」
俺は適当にそこらに散らばっている。書類に手を伸ばし、問題を出す。
えっと、何々……『龍種について』ってやつか。この世界には龍がいるようだ。そういえば、あの英雄の本にも出ていた気がする。この人はこんなことも研究しているのか。本当にすごい人なのかもしれない。
気を取り直して、書類から先生に目を向ける。
「それはだな……確か……」
「……やっぱり忘れてるんじゃ」
「待て、早まるな。すぐに答えを求めるな。こういうのはだな。時間を掛けてゆっくりと考えるものだ。そうすることで必然、答えに至るのだ。分かったか、この不埒ものが」
腕を組んで俺を睨みつけていた。
どうやら怒り出したので、本腰を入れられる前にさっさと諫めよう。こういう人が、本気で怒ったら何をするのか分からない。くわばらくわばら。
「あー、はいはい分かりました。ってことで片付けますね」
「話を聞け……」
そうは言ったものの、俺が片付けるのをもう止めることはなかった。
書類は、サインがしてあるものとしていないもので分けて、本は似たような題名で固め、本棚に戻した。こういうのは、施設の時によくしていたので別に大変でもなかった。
「これで、よし」
「満足したか? じゃあ、出て行ってくれ。気が散る」
こっちも見ず、シッシと手を振っていた。
「……分かりました。では、明日からお願いします」
最後まで、素っ気ない先生に頭を下げて部屋を出た。
コモン・バーベンを出て屋敷に戻る。俺はここまで徒歩で来ていた。初めて来たときは馬車で来たのだが、そこまで遠くないこともあり、歩いて通うことになった。
特に良いことは、街を見て回れることだ。初めてこの世界に来た時にも見て回ったが、今はその時とは違う感覚でこの国を見られていると思う。それにまた今日一つ新しいことに気が付いた。この国の至る所で花が咲いている。自然に地面から咲いているのもあれば、花壇に植えているのもある。赤色、黄色、青色、白色。色とりどりの花たちが、この街に素朴な彩を与えていた。もちろん、花で埋め尽くされているわけではない、花は仄かに咲き誇っているのだ。
前に聞いた宗教によるものだろうか。その宗教の枢機卿があんな悪事を働いていたが、そんなことは関係なく俺は美しいと思った。
俺はそんな光景に笑みを浮かべ、足早に屋敷に帰ったのだった。
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