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ドラゴン娘の日常  作者: さえぐさ
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第七話 魔力コントロールと私


 兄さんが私に手を差し出す。


「大丈夫、一緒にやっていこう。手を貸してみ」

「手?何をするの?」

「今からオレがリアの魔力を使って術式の構築をする。その感覚を覚えるんだ」

「私の魔力を使ってって、そんなこと出来るの?」

「出来る。リアはできるだけ力を抜いて、魔力の動きに集中してろよ。わかりやすいように手の平でやってみるから」


 私は手の平を上に向けて兄の手の平の上に乗せると、兄は私の手を固定するように軽く掴んだ。「いくぞ」という掛け声と共に私の魔力が動き出す。私は何もしていないのに魔力だけが勝手に動くのは、なんだかぞわぞわして変な感覚だ。


「オレが魔力を動かしているのは分かるな?これを手から放出して、火に変換」


 手の平の中心から魔力が溢れだし、それが火に変わり燃え上がった。

 ロウソクに灯るような火ではないけれど、ブレス出だした火の玉よりは小さくて弱い。そしてなんとなくだけど、火の大きさの調節も出来るような気がした。


「手、熱くない……」

「自分の魔力で作った魔法で自分の体が傷つけられるようなことは、よっぽど暴走しない限りないよ。

 もともと龍人族の体は魔法に強いから、他人の魔法でも怪我しにくいかな」


 手の中に火が収まっている不思議な光景。このまま握りつぶせてしまえそうだ。


「魔力を手から出して、体の外で火に変換する感覚は分かったか?次は徐々に魔力を絞っていくぞ」


 手から出ていく魔力が細くなっていくに合わせて、手の上にある火がすーっと小さくなっていく。

 そして魔力が途切れると、火もぷつりと消えた。


「お、おおぉ……」

「これが魔力コントロールの術式構築。どうだった?」

「なんか、こそばゆい」

「あっははは、わかる!他人が自分の魔力を使うとざわざわ?ぞわぞわ?するよなー」


 なんか癖になる感じ、と笑う兄に曖昧に笑って誤魔化す。私はこのぞわぞわ、くすぐられているみたいでちょっと苦手だ。


「じゃあ今度はリア1人で同じようにやってみろよ」

「うん」


 兄がしたように、自分で魔力を動かしてみる。出来る限り兄がした動きを辿るように魔力を動かしたが、手の中でグルグルと回るばかりでうまく外に出すことができない。


「………む、」

「魔力の放出ができないのか?こういうのはイメージが大切だぜ。勢いよく出すんじゃなくて、にじみ出るようなイメージでオレはやっているんだけど」


 滲みだす………汗みたいな感じだろうか?全身に汗腺があり、細胞と細胞の間からにじみ出てくるようなイメージで………。


「………ん?あ、あ」

「出てきたか?よし、それをすかさず火に変換!}

「うんっ」


 にじみ出た魔力を火に変換、……しようとしたがうまくいかない。いつもは肺でやっていることを手でやるのは勝手が違い過ぎる。

 放出する魔力が足りないのか、パチパチと火花が弾けるだけで火が点かない。


「今は火力の調節はしようとしなくていい。火を点けることだけに集中するんだ」

「う、う、ぅぐううぅ~……あっ」


 もっと放出する魔力の量を上げようとしのごのしていると、急に体の力が抜けてその場にへたり込んでしまう。

 なんだかいきなり体が重くなり、起き上がることもままならない。


「リアっ大丈夫か?!」

「な、なんか、急に力が抜けて」

「悪い、無理をさせ過ぎたな。たぶん魔力不足が原因だから深呼吸したら治るはずだ」


 こんな風になったのは初めてで、兄の言う通りに深呼吸をしてみる。すると、みるみるうちに体の力を戻ってきた。


「えっと、なおった?みたい」

「あぁよかったぁ!

 たぶんだけど、手から魔力を放出させようとして全身から放出してしまっていたんだと思う。それで魔力不足。体の中の魔力が少なくなりすぎると気絶することもあって、魔法の練習中とかによくある事故なんだ。

 すっかり失念してたよ、ごめんな。気分悪いとかないか?」

「もう全然平気だよ。深呼吸したら治ったし」

「龍人族は肺が強いから空気中の魔素を自分の体に取り込みやすいんだ。この山は魔素の濃度が高いから、深呼吸である程度魔力が戻ったはず。

 ここが標高が高くて、特別な山だから深呼吸で簡単に魔力を回復することができるけど、他の場所だとこうはいかないから、魔法の練習をするときは注意してくれ」

「うん、わかった」

「……じゃ、今日はここまでにしよう。もうだいぶ暗くなってきたしな」

「えっ、でも………」

「オレが来てからこんなすぐに魔力不足になったんだ。今日はずっと練習していたんだろ?

 焦ってぶっ倒れていたんじゃ回復に時間がかかる。今日はもう休もう」

「…………うん」


 正直、まだもう少しだけ練習していたいという気持ちはある。兄さんは明日の朝には学校に戻ってしまうから練習を見てもらえるのは今だけだ。残り少ない日数でこの魔力コントロールを習得できるか不安もある。

 とはいえ、火が落ちてきているのは事実だし、長距離移動で疲れているだろう兄に我儘は言えない。


 渋々頷いた私に、兄は苦笑しながら頭を撫でまわしてきた。


「明日の朝、少し早く起きて続きをしようか。一晩寝れば魔力も回復しているだろうしな」

「え、いいの?兄さんが疲れちゃうよ?」

「へーき。オレはほとんど見てるだけだし、明日は移動するぐらいしかやることないからさ」

「本当に?………じゃあ、おねがい、します」

「おうっ、にーちゃんに任せとけって!」


 その移動が大変なんだろうなとは思いはしたけれど、今は兄の優しさに目一杯甘えることにした。

 いつか、この恩を返せたらいいと思う。


「さ、帰ろうぜ。母さんが夕飯を作って待っててくれてる」

「うん」



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