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十五夜の調べ  作者: 紫木
4/5

雨を乞わない傘

ある日、私は不器用な傘に出会いました

その傘は雨を嫌い、濡れることを嫌っておられます


さて、果たして傘が雨を嫌うというのはどういう了見なのでしょうか

ましてや濡れることが嫌いとなりますと、そもそもの存在意義にも関わります

貴方様は、いったい何を考えておられるのでしょうか

いったい何様のつもりなのでしょう

不躾ながらも、私の口からはそんな言葉が漏れました


しかし、傘は黙して答えません

これが答えですと言わんばかりに、空を見つめておられます


それならばと、私は重ねて問い掛けます

貴方様には何が見えておられるのですか

それとも何かを目指しておられるのでしょうかと


すると、傘は億劫ながらも口を開きました

私が……私が必要になったのならば、それは雨の日です

しかし、しかしですよ、私は雨から完全に主様を守ることは出来ないのです

そんな私を、誰が必要とするでしょうか

雨から守るとは口ばかりの、半端物なのですと


雨が降らねば、主様は濡れますまい

だから、私は雨が嫌いですし、濡れることを嫌っておるのですと


ああ、なるほどと……私は納得することが出来ませんでした

他人の気持ちを推し量ろうとするほど愚かな行為はありませんが、

私には、どうしても言わずにいられなかったのです


それでは、貴方が救われない


その言葉を口にした途端、ある少女の姿を思い出しました


傘はそれ以上、黙して語りません

ただ静かに、その場に佇むのみだったのです

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