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十五夜の調べ  作者: 紫木
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寄りかかる杖

ある日、私は一振りの杖と出会いました

その杖はボロく、今にも崩れ去ってしまいそうなほど、頼りがいがありません


私はふと考えたのです

杖の在り方とは、その全てを支え、導く手助けをするものではないのかと

ならばどうでしょう

この杖は本来の役割を全うし、そのお役目御を果たし得るのでしょうかと


その杖は壁に寄り掛かり、主人すらも失くした様相です

そんな杖に、何が出来るのでしょうかと


然れども、杖はただ微笑んで、こう言いました

私はただ、支えるのみの存在です

それ以上は分不相応なのですと

然れども、杖は気丈に微笑み、こう言いました

私に構わずお進みなさい

私には、此処にいる事自体がお役目なのですと


私は今一度あたりを見回しました

それでもそこには何も無く、ただ一振りの杖が壁に寄りかかるばかり

浅慮な私は今一度、杖に問い掛けました

貴方はどうして此処に留まっておられるのでしょうかと


杖はただ、微笑むばかりで、何も言葉を発しません

杖はただ、そこにいる事が当然のように、そっと目を閉じました


嗚呼なるほどと

私は大きな勘違いをしていたようです

そもそも貴方様に出来ることは、それしかなかったのですねと

主人を失くしてなお、貴方様にはそこにいる事しか出来なかったのですねと


然れど、その姿に悲観的な部分はなく

然れど、その姿には一片の曇りも見当たりません


私は杖に対して、深く頭を下げました

そしてその場を去ることにしたのです


名も無き杖は、今日も主人を支えておられます

名も無き杖は、お役目を放棄などしておられませんでした


今でもずっと、主人様を支えておられるのですねと

今一度、深く頭を下げたのです



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