ここに来た理由
金色に染まる草原の中、私は一人の少女と出会いました
その少女は金色の中にあって、それ以上に眩く輝いておりました
自ずと少女の方向へと向かう私に、蝶々が纏わりつきます
その姿はまるで琥珀の塊
何の奇縁でしょうか
かつて愛し、かつて失ったものが、今まさに目の前に現れたのです
私は不意にこう思いました
これであの日に戻れるのなら、其処には如何程の幸福があったのでしょうかと
私は不意にこうも思いました
これであの日に戻れるのなら、ここから私は何処へ向かえば良いでしょうかと
思い出を無くした先に、思い出を抱えては参れません
思い出を無くした私が、思い出に何を想うのでしょうかと
私の懊悩を他所に、蝶はヒラヒラと舞い去って行きます
あたかも私を導くかのように あるいは私をおちょくるかのように
ヒラヒラヒラヒラと舞い去って行くのです
そうして視線は辿り着きます
金色に染まる草原の中、私は一人の少女と向き合います
あろうことか、その少女は私と目が合うなり、こう口にしました
絶対に貴方のことを許さないと
これには私も些か参りました
何故私は、こんなにもこの少女に恨まれているのでしょうか
何故私は、こんなにもこの少女に罪悪感を抱いてしまうのでしょうか
分かりきった事を……私は何様のつもりなのでしょうか
これは長い長い、それでいて、かつて尽きた旅路の続き
私と少女はもう一度此処で出会ってしまったのです