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怪盗対名探偵……引き分け

作者: 飛鳥 友

怪盗対名探偵の2作目です。

「探偵さんの負けだ。」

 ビルの窓からの明かりだけがさす薄暗い深夜の裏路地で、怪盗多面相は不敵な笑みを浮かべる。

 数十台のパトカーと警官で包囲し、袋小路に追い詰められた怪盗に逃げ道はないというのに、余裕の表情だ。

「負け惜しみを言うな……このアリ一匹這いだせそうもない包囲網を前にして、お前にどんな策があるというのだ?」

「例えば……ここに居る警官たちの半分が、私の手下たちに入れ替わっていたとしたならどうする?ここ3ヶ月間でバレない様に一人ずつ順に入れ替えておいた。」

 多面相が右手を上げると、探偵のすぐ後ろで路地を固めていた警官たちが自らの制服を剥ぎ、黒装束に変わる。

「ば……馬鹿な……。」

 余裕でパイプに火をつけふかし始めた探偵が、そのパイプを落としてしまった。

「ふふん……残念だったね……では、おさらばだ……。」

「まてっ……こんなこともあろうかと……俺の配下の青年自警団員を、今年春にお前の手下として送り込んでおいた。おいっ、お前たち!」

 今度は探偵が手を上げると、黒装束の男たちの半分が、緑色を基調にしたユニフォーム姿に切り替わった。

「な……なんと……。」

「ふっふっふっ……観念してお縄につけ!」

 ユニフォーム姿が凛々しい青年自警団員が一歩進んで、驚いて目をむく怪盗多面相を取り囲む。

「待て待て待てっ……そんな事なら私だって去年の秋から青年自警団募集の時に、手下を潜り込ませていたはずだ。者ども!」

 またまた多面相が右手を上げると、ユニフォーム姿の半数が黒装束に変わり、ユニフォーム姿の自警団員を制する。

「そ……そんな……」

「では、今度こそ失礼……。」

「まっ待てっ……そういえば去年の春にも青年自警団を送り込んでおいたはず……覚えているか?」

 探偵が右手を上げた。

「だったら私だって2年前の自警団員募集の際にも……。」

 怪盗多面相も負けじと右手を高々と上げる。

『えーと……1ヶ月前に多面相の手下だったのが警察官と入れ替わって……その前が青年自警団で多面相の手下として送り込まれて、それからその前は……多面相の手下で青年自警団募集に応募させられ……えーとその前はどうだったかなあ……。』

 黒装束の男たちもユニフォーム姿の男たちも指を折って、自分の来歴を振り返り始めた。

「おっおーい……君たち元々は私の手下だよな?」

「いや……元々は青年自警団だよね?」

 探偵も多面相も、自信なさげに首をかしげる青年たちの顔色を伺い始めた。


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