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◇ ◇ ◇
俺達はエリア内のカフェテリアにて休憩した。
窓際の席について、コーヒーとコーラを注文する。
「今日はついてない。勝負スカートが台無しよ」
「やっぱり服を買った方が良かったんじゃないか?」
アブノーマルなプレイでもさせている気分になる。他の客による好奇の視線が痛がゆく、落ち着かない。
「ダメ。もったいない!」
「だからってな」
対面に座るそあらくんはトイレで脱いだスカートや下着の代わりにと、俺のジャケットを着ているのだ。
「それはない。それはまずいぞ」
余りまくりの丈でワンピースみたく下半身が隠れてちょうどいい、などと言われたけど、外見上は小さな女の子にこんな格好させていたらどうしても目立つ。そのへんのTPOの意識がこの子には足りていない。
「いーのいーの。やっぱ、このにおい好きっ」
何が楽しいのかニコニコとして、ストローでコーラをちゅーちゅー吸いながら、しきりに足をぶらつかせる。
よせよせ見えそうだというに。よーし。
「まァとにかく、可愛い笑顔に戻ってくれて嬉しいよ。どうだ、今からデートの仕切り直しでもするか?」
「ばっ……なっ、ななななに言っ……!」
不意打ちのイジリ、成功の巻。そあらくんはたちまち頬を火照らせ、飲み損ねたコーラを口の端から垂らす。
どぎまぎさせた罰だ。はっはっは。
「あ! からかったんだ! あんたってもう! 笑ってんじゃないわよこら! そういうとこ性格悪いわよ!」
遅れて気付き、今度はぷすぷす湯気をふく。
本当に素直な子だな。
しみじみと思いつつ、届いたコーヒーに口をつける。すると彼女は、真剣な眼差しでジーッと見つめてきた。
「ブラック派かコウシロウ」
「味覚がないから何派でもない」
「えっ、ラーメンの食レポは?」
「舌触りの事しか言ってないだろ?」
「そういやそうね。また新事実発覚」
不思議だ。ついさっきまで戦いの殺伐のただ中にいたというのに、俺はなぜだか奇妙な安らぎを覚えている。
俺は人間である事を諦めると同時に、あらゆる望みも捨て去った空っぽな男だ。彼女はそんなつまらない奴と一緒に居たいと言う。理由はよくわからんが、『望みを抱かれる』という事が、こうまで心地いいものだとは。
自分が、価値ある存在になったような。
彼女は俺に何を求めてくれているのか。
出来る事ならそれを与えてやりたいと思う。
「キャーッ! エイリアンが出たわ~!」
「ドキュンとゴスロリとマッチョマンの変態だあ~!」
人々の悲鳴によって、つかの間の休息は終わる。
カフェテリアの二階の窓から駐車場を見下せば、例の三人衆が好き放題に暴れていた。
ダッシュが、男児のけん玉を奪おうとしてその妹さんらしき幼女の返り討ちにあってたり。
ネダリーが、金持ちっぽいおじさまハンティングしてメロメロにしてお洋服をねだったり。
モンモンが、仲の良さげな女子グループにちょっかい出して抱き合えキスしろと煽り立てたり。
「シャドーネビュラめ、追ってきたか! そあらくん、行くぞ!」
「あいよ! 窓を割って飛びおりるのねっ!」
「バカもん! そんな非常識な事するかっ!」
はりきり魔法少女の頭を小突いて、すぐ撫でる。
「あんた、撫でれば治るとでも思ってんの? そんなんしても痛いもん痛いんだから!」
俺達は普通にレジで会計を済ませると、普通に階段をおりて、駐車場へと向かうのだった。
「いたなヒーロー、オラァ! テメーさっきはよくも、オレ様ばっか集中的にドツキまわして逃げやがってェ」
ダッシュが俺を見とがめ、わめく。
整った顔は確かにあちこち腫れ上がり、青アザまみれではあるが、今しがた幼女にもらったぶんもあるだろ。
「……コウシロウ様、どきーん。あ、これは誤解。不貞など決して働いてない。操を捧ぐのはあなただけ……」
ネダリーは既に大量のオヤジに貢がせてた。
浮気現場を押さえられたみたく焦って弁解してるが、ぶっちゃけ、オッサンなら誰でもいいんだろ。
「HAHA! ユー、ネコっぽい顔してマスネ! 百合凌辱本に出演させてぐちょぐちょにしてイイデスカ?」
モンモンに至っては、俺を見てすらいない。
薄い本を女子に読ませて、赤面させたり吐かせたり、目覚めてしまった被害者も何名かいるようだ。
「やめろ貴様ら!」
「とっとこホームに帰りなさ……あぁっ!」
ぽかんと口を開けて固まるそあらくんの視線の先は、トライサンダーのいる方向だった。そこには二つの影。
「ニィちゃん! まほーしょうじょ、みっけたじょ!」
「そうだね妹」
赤潮兄妹である。
「クロウザーまでも、だと!?」
最ッ悪の流れだ。今までありそうでなかった特撮系と変身ヒロイン系、両陣営敵対組織による同時襲撃とは!
しかも俺はまだ変身不能。
生き残れるか!?




