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だけどなぜ?
いくらダイヤモンドの杭でも、特殊強化合金の体には傷ひとつ付けられないはず。
節制生活で劣化? ヨクボーン戦での負傷が、装甲のほころびに? いずれにせよ、私のバカが招いた窮地。
「そあらくん」
力なく座り込んだコウシロウが、掠れ声で私を呼ぶ。
「喋っちゃダメ!」
「今日やたらと構ってきたのは、バイクの件が原因か。あれはもう気にするな」
優しく手を握られ、ステッキを落とす。
「俺達はパートナーだ。部屋も分け合ってるんだから、俺の財産はキミの財産でもある。いざとなれば寂しいがトライサンダーとも別れよう。買取り店のおやっさんはナイスガイだ。彼なら安心して戦友を任せられる……」
「やめてよ。なに言ってんのかわかんない!」
自分にもしもの事があったら今度こそトライサンダー売って生活費にしろっての?
やだよ。もしもなんか、起きてほしくない!
ずっとそばにいてよ。コウシロウ!
貧乏でもケンカしてもゴハンがちくわでもゲンコツの刑でもパンイチでもオッサンでも、なんでもいいから!
だって、大好きなの。
「いつ嫁に出してもいいよう磨いといてくれ、よ……」
コウシロウは微笑み、瞼を閉じた。
【ヒロまほ】完
そして、彼は、トランクスの上から装着していた変身ベルトのレバーを叩く。
「だが、それはあくまでも最終手段だからな」
お子様の目に悪そうな激しい紫電のフラッシュが瞬くと、肉体の内側から黒と赤の外骨格が生成されてゆく。
その際、何かの破片が床に落ち、転がった。
「俺の目に稲妻が弾けるうちは、絶対に売らせはせん」
「はい?」
「すまん。怪我は治ってたんだ。キミの反応があまりに必死だったんで、その、つい……からかった」
ダイボーガーは、平然と起き上がる。メタルマスクの頬を気まずそうにポリポリ掻く仕草が、無性に腹立つ。
殴っていいと思うひと挙手~。
◇ ◇ ◇
静かな深夜の高速道路を駆けるソイツの背中に、私は大声で呼び掛けた。
「みーっけ!」
「げっ!」
目玉をひん剥き、振り向く洗濯機野郎。
疾走するトライサンダーの後部座席に威風堂々、仁王立ちした私は、運転席のダイボーガーと声を合わせる。
「とくと目で見よ耳に聞け!
私はさそり座の女・ぷらねたん!」
「サイボーグウォーリア・ダイボーガー!
キミの心に走馬灯散りばめちゃうぞ☆」
これぞ、ヒーローと魔法少女の相乗りで~いっ!
「振り落とされるな。ぷらねたん!」
「構わず飛ばしてダイボーガー! ここから射つっ!」
トライサンダーが速度を増す。逃げる洗濯機野郎との距離は、もはや20メートルもない。
怪人の脚力といえど、鋼鉄の雷を振り切れるものか。私はステッキを振るい、変形させた。
「スバルアーチェリー」
翼状の先端が開き、伸長、間にワイヤーを張って弦となる。柄は分離して、縮小、研ぎ澄まされて矢となる。
「シュート!」
解放した矢は風を切り、音を裂いて真っ直ぐに飛ぶ。洗濯機野郎の尻尾、すなわちノズルを射抜き、爆ぜた。
もんどりうってひっくり返り、路面にキスする怪人。
「ぐっぴ! コラァこっちには人質が……ってあれ?」
間抜けなソイツの真横を通過したトライサンダーは、三輪の下に火花を咲かせて急旋回、急停止してみせる。
大家さんはというと、既に魔法で助けてました。
彼女は今、巨大な泡みたいな球状の結界に包まれて、ぷかぷかと楽しげに中空を漂ってる。怖くないんかよ。
「ぐぞォ玉砕覚悟完了! ちなみに、机に給食しまって腐らせる子がクラスに最低一人いるのは」
ノズルを壊されて自棄になったらしい洗濯機野郎が、シャーペンアームを差し向ける。
対するダイボーガーはまったく同時のタイミングで、こぶし大の物体を、投てきした。
「おれの仕業、ギャーッ!」
ダイヤモンドの芯が飛び出すよりも速く射出口に吸い込まれた物体は、アームを分解せしめる。
それは先程ダイボーガーに打ち込まれた、芯の破片。
「覚えておけ。ダイヤが最も硬いというのは間違いだ。衝撃への強さを示す靭性は低く、水晶並に壊れやすい」
スロットルレバーを引き絞り、トライサンダーによる突進を見舞おうとするダイボーガー。
ここで私は後部座席から跳び、彼の膝上に乗り移る。
「プラネテス・プレッシャー!」
元の形態に戻ったスバルステッキが重力波を放つと、洗濯機野郎の全身は瞬く間にひしゃげ、爆発四散した。吹き上がる黒煙の幕を、私たち二人はトライサンダーで突っ切ってゆく。深夜の死闘はこれにて決着したのだ。
「何もキミがやる必要は!」
「いいの。私にも背負わせて、あなたの業を」
戸惑う彼に抱き付いて、笑う。
「私達、パートナーでしょ」
変身のタイムリミットが訪れて、私は全裸になった。
つづく




