旅の終わり
全てを置いてくるつもりだった。
それにも関わらず、今全身を貫いていたのはただひたすら痛みだけだった。
建物を出たあたりに彼女がいた。
思いがけなかった。いるとは思わなかった。
彼女はなんだか妙な顔をしていた。
まるで開けた時、思っていたのと違う
プレゼントだった時の子供の顔だった。
その後、しけた飯屋に行って飯を食べた。
会話は先ほどとは関係ない愚にもつかないものばかりだった。
やがて店を出て、駅のホームで電車を待っていた。
暗闇の中で遠くの街がにじんでいた。
景色から目を離さずに彼女が言った。
「いいじゃん、あたしがいるんだから」
冗談めかして言った彼女の目は潤んでいた。
そろそろ、この物語を終える時が来たのかも知れない。
これは僕の血と涙と後悔と、あと、あと…。
「そうかよ」
「そうだよ」