3話 ゲストルーム
さくらが気が付くと、そこには大きな部屋があった。
光と緑にあふれた大きなカフェ。いくつもの白くお洒落な椅子とテーブル。
段差のある部分もある。様々な観葉植物が並んでいる。
そして流れ始める、落ち着いたジャズの音色。
何と言うか、コーヒーが飲みたくなる感じだ。
「へええ、結構お洒落というか、気分の良い場所だね」
そういうさくら。
「まあそうだよな。そりゃ当たり前だけどな」
そう言う理。
「そういや理はこの種のゲームやったことあるわけ? 何かすぐログインしてたけどさ」
そう聞くさくら。
「おっと。この世界では樹とでも呼んでくれ」
そういう樹。
「ああ、そういえばそうだっけ? ちなみに私は何と名乗れば良いかな?」
聞くさくら。
「んー、まあ何でも良いと思うけど。今風に結愛とでも名乗ればどうだ?」
聞く樹。
「良いかもね。ちょっと今風過ぎる気もするけど。んじゃ私は結愛、あなたは樹ね」
そういう結愛。
「ちなみにさっきの質問に答えると、もちろんやったことはあるぞ。家でだけどな」
そういう樹。
「え? 家でもできるわけ?」
聞く結愛。
「機器を買えばな。ていうか、お前はゲームとかやったことないわけ?」
聞く樹。
「スマホゲーとかならやったことあるけど。こういうのってオタクっぽいと思ってたからさ」
そういう結愛。
「まあそうかもな」
そういう樹。
しばらくすると、地面から光が放たれ、ルールーがログインしてきた。
「ヤッホー! お二人さん、無事ログインできたみたいだね!」
そういうルールー。
「そりゃそうでしょう。何か事故があれば大変ですよ」
そういう樹。
「それでハンドルネームは決めたわけ?」
聞くルールー。
「ええ」
そういう結愛。
「んじゃ『ハンドルネームの設定』をやっといてくださいね。表示されるようになりますので」
そういうルールー。
「わかりました。『ハンドルネームの設定』」
さくらは宣言。ハンドルネームを『結愛』にした。
「『ハンドルネームの設定』」
理は宣言。ハンドルネームを『樹』にした。
「こんにちは、そこのお二人さん」
前から二人の少女がやって来た。『ソフィア』『エマ』と表示されている。
「こんにちは。ソフィアさんと、エマさんで良いのかな?」
聞く結愛。
「ええ。あなたは『結愛』ね。良かったらお話しませんか? こういうのって初めてで、イマイチ良く解らなくて」
そういうソフィア。
「喜んで。私も良く解らないんですよね……」
そういう結愛。
「良かったら、席におつきくださいな。コーヒーとケーキをご用意しますよ」
そういうルールー。
「え? それはありえなくない? お金とるとか?」
聞くエマ。
「取りませんよ。タダですよタダ。当たり前じゃないですか。もっとも、課金していただけるなら凄いケーキとか食事も用意はできますけどね。ま、今回はテストプレイだしどっちにせよお金取ったりはしませんよ。そもそもこのゲーム、あんまり課金とか必要無いんですよね、ぶっちゃけた話」
そういうルールー。
「ん? そうなんですか? それじゃどうやって利益を上げてるので?」
聞く樹。
「まあ課金すれば色々お洒落したり城内を飾ったりとかはできますけどね。基本的な部分は無料ですよ。ま、弊社のプログラマー達が趣味で作ってるゲームなんで。お金儲けのためのゲームは他にいくらでもありますからね」
そういうルールー。
「へえ、太っ腹なのかもしれませんね。まあ、プレイヤーとしては嬉しいですけどね」
そういう樹。
少女達と樹が席に座ると、一人一つのカプチーノが現れた。
更に様々なケーキがテーブルに現れた。
苺のショートケーキ、ミルフィーユ、モンブラン、ガトーショコラ、チーズケーキだ。
「よし、んじゃここは苺のショートケーキもーらおっと」
そう言ってそれを取る結愛。
「あ、ずるい! 結愛ちゃん!」
文句を言うエマ。
「人生早いもの勝ちなんだよ♪ いただきまーす」
そう言ってフォークで食べる結愛。
ホイップクリームの甘さが口の中に広がる。
「お、おいしい! なにこれ滅茶苦茶おいしいじゃん!? 何で!? どうなってるの!?」
驚く結愛。
「いや、そりゃおいしいですよ。当たり前じゃないですか」
そんなことをいうルールー。
「ん? そりゃそうか。まあそうだよね。ま、いいや。でもこれは良いね。ケーキのためだけに来ても良くない?」
そう言う結愛。
「そう言う人も結構居ますね。昔はあんまりおいしくできなかったんですけど、最近は技術の進歩で相当おいしいケーキができるようになりましたね。ま、あまりおいしくしすぎるとそれはそれで問題なんで難しい所なんですけど」
そういうルールー。
そうして談笑しながらケーキとコーヒーを楽しむ5人。
その時だった。
「やっほー! ルールーおばちゃん!」
そんなことを言う男の子。『オリバー』と表示されている。
「ちょっとオリバー君! 私の事はお姉さんと呼びなさい!」
文句を言うルールーおばちゃん。
「えーおばちゃんはおばちゃんじゃん。おばちゃんをおばちゃんと言って何が悪いの?」
そんなことを言うオリバー。
「おばちゃんおばちゃん言うな!」
文句を言うルールー。
「おばちゃーん、またこのゲームについて教えてよ~」
そんなことを言うオリバーの横の少年、『ノア』。
「やです~ おばちゃんとか抜かすクソガキには教えてあげません~」
んな事を言うルールー。
「えーひどーい。わかったよー綺麗なお姉さん! 教えて綺麗なお姉さん!」
そういうノア。
「しょうがないにゃあ…… 何を聞きたいの?」
機嫌を直したらしいルールー。