2話 機器 仮想世界へ
二人がブースの中に入ると、巨大な機械があった。
黒い革製の自動車の椅子のようだが、より巨大な、コックピットのようだ。
「これはまた、大掛かりですね」
そういう理。
「まあね。金かかってんだよね、これ」
そういうおばさん。
「ふうん、ま、いいや。これに座れば良いんだよね?」
そう言って座るさくら。
ウィーン、とゴーグル付きのヘルメットが降り、ガチャリ、とセットされた。
また、手足が拘束された。
「お、おっと。これじゃ動けないんだけど」
驚くさくら。
「ああ、『拘束解除』とでも言えば外せますけどね。ま、安全のためですよ。もっとも、仮想世界に行っている間は現実世界の方は基本動けませんけどね。この種のゲームは初めて?」
聞くおばさん。
「『拘束解除』」
さくらは拘束を外した。
「まあ、はじめてですね。ちなみに拘束をもう一度行うには?」
聞くさくら。
「『拘束再開』と言えばいいです」
そういうおばさん。
「わかりました。『拘束再開』!」
そういって手足をロックしたさくら。
※準備ができました。ゲストルームにログインしますか?※
「何かログインしますか? とか出てきたんですけど」
そういうさくら。
「『ログイン開始』と言えば仮想世界へと行けますよ。ま、詳しくは向こうでお話しましょうか。あ、ハンドルネームを決めておいてくださいね」
そういうおばさん。
「ハンドルネーム? 偽名ですか? 何故?」
聞くさくら。
「いや当たり前じゃないですか。まさか本名でやるつもりですか? まあそれでもいいですけどね。あなたにもプライバシーってやつがあるでしょう?」
そういうおばさん。
「あ、そういえばそうですね。ちなみにあなたのことは何とお呼びすれば?」
そう聞くさくら。
「んー、そうですね。『ルールー』とでもお呼びくださいな。きゃぴっ☆彡」
一回横に回って指で自分の頬を指すポーズを取り、超可愛い子ぶるルールー。
「……」「……」
呆れる二人。
「おっと失礼…… ま、詳しくは向こうでお話しますんで。どうぞログインしちゃってくださいな」
そういうルールーおばさん。
「んでは俺はもう行くぞ。『ログイン開始』」
そう言って仮想世界へと潜っていく理。
「あ、待ってよ! もう…… 『ログイン開始』!」
さくらがそう言うと、機器は妖しく光り、彼女も仮想世界へとダイブしていった……。