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 ハマリ家の屋敷から単車を飛ばし、総領事館の地下に入った。グリンから連絡が入っていた。

「グリン、待たせてすまなかった。どうした?」

「エア様より、ラビスミーナ様宛、親展のメールをお預かりしています。例の画像の解析結果だそうです」

「ありがとう」

 グリンの提示したメールを思念で開く。画面が切り替わった。暗黒の海。スポットライトのような潜水艇の灯りが照らし出しているのは、海中を落下していく若い男。華奢な体を包む白い服と髪が揺れている。まるでスローモーションのようだ。目は閉じられ、その厳かな表情は全てを受け入れているかのよう。リン・メイ。爺さんは天使と言った……

「グリン」

 私は父上からのメールを閉じ、待っていたグリンに戻した。

「画像近くで採集したサンプルから、人のDNAの痕跡が出たと父上にお伝えしてくれ。データはハニヤスが持っている」

「レンバ氏と接触されたのですね?」

 グリンはほっと息を吐いた。

「いや、まだだ」

「まだ?」

 グリンの怪訝な顔。

「今、この時も危ない橋を渡っているのだろうが、こちらが下手に動けば、ハニヤスの足を引っ張ることになりかねない」

「気がもめますね」

 グリンは私の内心を読むように言った。

「とにかく、お父上にサンプルの件をお伝えいたします。それと、行方不明だった思念認証の専門家が見つかりました」

「ルイーズ・ベネットだな? どこにいた?」

「それが、ネストで……すでに死亡していました」

「どういうことだ?」

「ネストの方から、行方不明だったルイーズ・ベネットについて問い合わせがあったのです。ネストのシーカルフホテルで死んでいたそうです」

 何ということだ。エドゥアルド・トゥビン、ヨーク・ローツ、そして、ルイーズ・ベネット……犯人は易々と事を運んでいる。不甲斐ないことに、私はそれに追いついていけない……

「状況は?」

「ネストの治安部に派遣した職員が聞き取った結果ですが、彼女は三日ほどシーカルフホテルに滞在していました。死ぬ前に、彼女はホテルのバーで酒を飲んでいたそうです。そこで酒を出した店員が彼女のことを覚えていて……何でも、彼女に声をかけている二人組の男がいて、彼女は彼らを断って早々に部屋に戻ったそうです。そして、その夜、彼女は部屋で死にました。死因は、爆死です」

「爆死だと?」

 思いがけない死因に、私はスクリーンの中のグリンを見つめた。グリンは苦い顔で頷いた。

「遺体は腹が破れ、内臓が散っていたそうです。ネストの治安部によると、内臓で極小の爆弾が爆発したと……時限式だったようです。そして、これは漠然とした記憶だという前置きで店員が語ったことなのですが、男たちの感じがちょっと違ったそうです」

「どういう風に?」

「彼女のことをしきりに気にして、遊びに誘っているようでいて、どこか雰囲気が違うと言うか。そんなものを感じたそうです」

「人の目はちょっとした違いを見分けることがある、というわけか。しかし、それだけではな」

「はい。ネストの治安部は事件にかかわったとみられる人物を探していますが、まだ捜査中だと言うだけで、途中経過については何の報告もありません」

「ネストか」

 娯楽やレジャーに特化したネストは、治安を重視する一方で、プライバシーは厳重に守られている。

「捜査は難航しそうです。核外のことなので、我々が行って捜査をすることもできません」

 グリンは珍しく苛立っていた。

「異なった核の間の犯罪はレンに報告される。父上のことだ、レンから逐一情報を取れるよう計らうだろう。ネストの領主にも声をかけてくれるはずだ。必ず犯人は見つかる。焦るな」

「わかりました。トゥヌ・クルヴィッツ、およびルイーズ・ベネットの殺害者の特定については、こちらで全力を尽くします。ラビスミーナ様はどうかハルタンの方を」

「うん。ではな」

 通信を切った。グリンには焦るなと言ったが、一刻も早く犯人を押さえなくては。リン・メイがらみのはずだ。まずは、何としても、リン・メイと接触する。

 胸に下げていた指輪が震えた。

「ヴァン?」

「ラビス、悪い。今、いいか?」

「ああ、珍しいじゃないか、どうしたんだ?」

「どうしても気になって……ジャンのことなんだ」

「技術開発部長のジャンだな?」

「ああ。ハルタンから俺のところに毎日の記録が送られてくるんだ。こんなこと、今まで無かった」

「どんな記録だ?」

「どこで、何をしたか。一緒にいたのは誰か、だな。ジャンは何かを知っているんじゃないだろうか?」

「そして、おそらく身の危険を感じている」

「ラビス」

 やはり、犯人は身近にいる。

「すぐにジャンに身辺警護をつけるよ、ヴァン。私もなるべく早くジャンに会ってみよう」

「そうしてもらえば安心だ。そばにいて役に立てなくてごめんな、ラビス」

「十分助かっている。これから電脳との駆け引きだ」

「それなら、俺もそっちに行こうか」

「何を言ってる。ジャンが留守の後をまとめるのがお前の役目だろう。ルイーズのことがあってみんな動揺してるはずだ」

「そうだが……わかった。でも……」

「うん、場合によっては助けを求めるよ」

「そうしてくれ。頑張れよ、ラビス」

「ありがとう、ヴァン」

 ヴァンはああいってくれたが、ここは自力で何とかするしかない。


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