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「マリア、私はリンと話をしなくてはならない。どうすればリンに会える?」

「リンは用心していて……見つけようと思っても、見つからないと思うわ」

 マリアはため息をついて首を振った。

「でも、リジエ療養所に行った後、マリアはリンに会った」

「あの時はリンから連絡があったから。心配しているだろうからって。それで会えたのだけれど……そうね、こちらからコンタクトを取るなら広域に繋いで……リンとはMaria Lily でつながるはず。でも、そこに行きつくまでに、ランダムに謎がかけられるの。とっても厄介で、到底行きつけない。だから、私の場合は、いつもリンの方から連絡があるの」

「Maria Lilyか。やってみよう。ありがとう。マリア」

「リンが可愛そうだわ。ずっと孤独で、彼を守るのは、オメガだけなんだもの」

「それは、もしかしたら、エバの残した電脳?」

「そう。エバはある研究室で働いていたけれど、電脳には長けていたの。リンはそれを受け継いで、改良した。改良……いいえ、そんなものじゃないわ、天才的なのよ、リンは。音楽もね」

「マリアの話でよく分かった」

「そんなに?」

 マリアは顔を赤らめた。

「二番目のリンはエバの電脳オメガを強化し、オメガを使ってニエドで商売をして、かなりの財産を築いたの。今のリンに誘われてリンの自宅を訪れたことがあるわ」

「何だって? マリア、それなら、大体の場所はわかる?」

 期待で、思わず身を乗り出した。だが、マリアはすまなそうに答えた。

「いいえ。ごめんなさい。場所はわからないの。本当よ。ハルタンといっても広いわ。それに繁華街や住宅街、オフィスビルの林立するエリア……リンはわざと複雑な道を選んだみたいで……それに、私、その時は彼の胸に顔をうずめていて……でも、これだけは言えるわ。リンの住まいは、エバの実家とは全く趣が違うの。近代的なホテル型マンションだったわ。今のリンもエバから受け継ぎ、磨きをかけた電脳操作技術で、匿名で仕事をこなし、収入には事欠かないって」

 私は頷いた。そうか……リンの住まいはわからないか……しかし、焦ってはいけない。私は自分に言いきかせた。事実は思わぬところでその姿を現すものだ。気を取り直して、私はマリアを見た。マリアは、まだ胸の中のものを吐き出しきってはいないようだった。マリアが口を開いた。

「私、そこでオメガを見たの。オメガは、まるで自分の意志があるみたい。リンのために動いているわ。オメガには膨大な医療の資料が入っていて、胚芽はいがのリンを守るカプセルをコントロールできるわ。『僕は特異体質で、オメガがそれを管理してくれている。家族は、もうみんな死んでしまっていて、今ではオメガだけが僕の家族だ』ってリンは言ったわ。私はリンの家族になりたいの。ラビスミーナ様、おかしいと思いますか? リンの体のことを知っているのに、でも、それでも、そばにいたいの」

「今では運命の人という言葉さえ、軽かったように思えます。マリア、リンとは……」

「ええ、愛し合っているわ、何度も。私、リンの子供が欲しいの。セシル、ラビスミーナ様、どうかリンの力になってください。リンは誰からも逃れている。それでも、誰かに見つけてもらわなくてはならないのよ」

頷くことしかできなかった。それでもマリアは満足した顔をしていた。


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