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 ナオミは出迎えた者に友達だと言えばいいと言ったそうだが、私の顔を知る者に会いたくはなかった。 できるだけ人目を避け、正面玄関に立つ。

「どちら様でしょうか?」

 マイクロフォンから男の声がした。

「ナオミの友達です」

 いささか心もとない。が、すぐに扉が開いた。

「どうぞ、お嬢様がお部屋でお待ちです。ご案内致します」

 声の主はこの屋敷の執事だった。若いが、この道のプロとして十分磨きがかかった感じの男だ。

「ありがとう」

 屋敷は上から見ると大雑把にVの字になっている。前にせり出した中央部分が正面玄関とホール、その先の広々とした階段を上がると執事は右手に折れ、中庭を見下ろす回廊を歩く。右手に並ぶ扉をいくつか通り過ぎた。

「こちらでございます。お嬢様、お待ちのお客様が見えました」

「ありがとう」

 金地に黒の模様で縁どられたドアが開き、室内が見えた。明るい。白く塗られた壁に赤や紫や黄色の花々が伸び伸びと描かれていた。窓の向こうには表の庭が楽しめるようになっている。ナオミに目を向けると、こちらは口を開けてまじまじと私を見ていた。私はナオミが何か言い出す前に素早くウィンクして黙らせ、執事を残して部屋に滑り込んだ。

「アロに頼まれたの。マリアに会いたい人がいるからって。あなたはどなた?」

 ナオミは私を見つめたまま、ようやく口を開いた。

「お会いしているわ、セシル・フレミングとして」

「セシル・フレミング? セシルさんですって?」

 ナオミが声を上げ、慌ててその口を押さえた。

「セシルさんのはずがないわ」

 出てきたマリアも疑わしそうな目で私を見つめている。

「私はラビスミーナ・ファマシュ」

「ファマシュ……ゼフィロウの……ファマシュ……?」

 ナオミは息を飲み、すぐに自分の電脳に駆け寄った。

「ラビスミーナ・ファマシュ様なら……いつか、ハルタンの庁舎を訪ねたことがおありだった。私も父に連れられてお迎えのパーティーには出ていたのよ。その時の映像があるはず……ほら……」

 ナオミは私と電脳に現れた映像を見比べた。

「本物ですよ」

 私は言った。

「そのようね」

「ええ」

 映像をじっと見ていた二人が頷き合う。

「でも……何故? セシルさんとは、その、ずいぶん違っています」

 マリアが言った。

「上手く化けていたでしょう?」

「化けた、ですって……?」

 マリアが少し身を固くした。一方、ナオミの方は興味津々だ。

「私、セシルさんはあんなお化粧しているけど、実際の歳はもうちょっと若いんじゃないかしらって気がしていたの。ほら、私って服とか、メイクとか大好きだから……つい、気になって他の人の服やメイクをよく見てしまうの。アクセサリーも安物じゃなかった」

 これは反省材料だ。これでは、まだまだ問題がある。

「ナオミ、そのことを誰かに言いましたか?」

「いいえ……だって、まさか、まさか、ね……でも、待って……もしかしたら、私、とんでもないことを……」

「どうしたの、ナオミ?」

 マリアが聞いた。


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