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 続けて、首の鎖に通された指輪からヴァンを呼んだ。指輪はオルクを呼ぶためのものなのだが、ヴァンがちょっとした機能を付け加えている。私の指輪とお揃いの指輪をはめたヴァンとの通信機能だ。ヴァンは、ふつうの端末で呼んでも大抵は反応しない。どこに置いたかも忘れている。それでは、いざという時に役に立たない。それでこんな手の込んだことになったのだ。

「ヴァン」

「わっ、ラビスか。連絡を待っていたよ。無事か?」

「無事に決まっている」

 滅多にヴァンの方から私に連絡してこないのには訳がある。仕事の都合上、私が抜き差しならない状況である場合があるからだ。

「で、何だい?」

「うん、呼んではみたものの、聞きたいことがはっきりしない」

「何だ、それは」

「電脳のことだ」

「電脳……で、なんでも言ってみろ」

 早くもヴァンは興味を持った。

「ええと、電脳が、その所有者をこの世界から徹底的に隠すことができるか?」

「もちろん、そのようにプログラムすることはできる。問題は、電脳に蓄積された情報量だ」

「二、三十年分ほどある。追跡する相手を阻み、本人情報を消して回り、危険を予知する。他にも、おそらく所有者の生命にかかわることまで管理しているはずだ」

「是非、お目にかかりたいな」

「まさにこっちはその網の目をくぐって所有者に会わなくてはならないんだ。どうしたらいいかな?」

「相手の情報を入れて、向こうが興味を持てば様々な謎をどんどん仕掛けてくるはずだ。それを一つ一つ解くんだよ。相手についてどれほど知っているかがカギになる」

「ありがとう、ヴァン」

 気落ちした。そんな作業、私にできるか?

「役に立ったか?」

「ああ。とっても」

 今のままではだめだということはわかった。リン・メイ、お前の問いに答えるには、どれほど調査が必要なんだ? いや、そもそも調査してわかることか? それならば、とっくにハルタン領主たちがリン・メイに近づいているはずだが、彼らにそれはできていないじゃないか。

「ラビス、どうした?」

「何でもない。ヴァン、そっちは変わったことはないか?」

「そうだな、思念認証を専門にしている一人が行方不明らしいんだ。それで、治安部が捜索を指揮していると思うが、何しろ画像解析技師のエドゥアルド・トゥビンがひどい死に方をしただろう? グリンは焦っていると思う」

「そうか」

「それに、ジャンも頭を抱えていたよ」

「ジャンなら、今こっちに来ている」

「ああ、だけど、正直、ジャンはハルタンの高度医療施設計画どころではないと思うんだ。行方不明のルイーズ・ベネットはジャンと知り合いなんだよ」

「ルイーズ・ベネット?」

「そう、認証技術の専門家」

「履歴を消すこともできる?」

「さあ、彼女がどのくらいの知識があったかは……正直わからないなあ」

 そうだろうよ、私は思った。ヴァンは周りのことは目に入らないたちだ。

「ヴァン、ジャンはベネットのことで何か言ってなかったか?」

「え? いや、別に……ジャンは忙しそうで、それに、すぐにハルタンに出発してしまったから」

「そうか」

 ヴァンに情報部の真似事は無理な話だ。

「ラビス、こんなことしか言えないが……気を付けてくれよ」

「ありがとう、ヴァン、じゃあ、また」

 名残惜しいが、通信を切った。

「おっと」

 タンベレからだった。

「セシル、ナオミがマリアを引き留めておいてくれるそうだ。ナオミの部屋で会える。出迎えた者にはナオミの友達だと言えばいいそうだ」

「わかった。ありがとう」

 単車にまたがった。


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