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 目が覚めると、カプセルの向こうにエステルがいた。

「お目覚めですね? ご気分はいかがですか?」

「ここから出してくれ」

「まあ」

 エステルは呆れ顔をし、それでもカプセルを開けてくれた。それから私の体の組織のダメージを調べて満足そうに頷いた。

「よくなっていますね」

「そうでなくては困る」

「でも、びっくりするほど回復が早いです」

 エステルは、今度はカプセルのモニターに記録された私のダメージを受けていた組織のデータを隅々まで見て、目を丸くした。

「信じられませんわ」

「得な体質なんだ」

 仕事上、怪我は付き物だ。怪我をしながら、効率よく仕事をこなさねばならない。カプセルに入っている時間があったら、体を動かしながら回復を待ちたいと思ってしまう。が、それを言ったらエステルに悪い。

「十分休めて、すっきりした。ありがとう、エステル」

「そんな、当たり前のことで……でも、嬉しいです、そう言っていただいて」

「ラビスミーナ様、いかがですか?」

 勢いよく医務室に入って来たマルトが、慌てて回れ右した。ああ、私はほぼ裸だったのだ。エステルが素早くガウンを着せてくれた。

「もういい、入ってくれ、マルト」

「あ、はい。失礼しました。つい、慌ててしまって」

「気にしていない。ところで、マリアの滞在先についてだが」

「え、あ、はい、わかっています。しかし、昨夜から戻っていないようです」

「ふむ。なるべく早く接触したいのだが。そうだ。私の端末は?」

「これです」

 エステルがセシルとして使っていた端末と、セシルの思念を出すブレスレットを持ってきた。治安部所属のアロ・タンベレに直接連絡するのは危険だと思った。私にとっても、タンベレにとっても。そこで爺さんを呼んだ。

「ロリー」

「セシル? ジョンから聞いた。無事か?」

「ええ。ジョンには世話になりました」

「ジョンが心配していた。アロもだ」

「ロリー、アロと会ってほしい」

「アロとはこれから一杯やることになっているが……どうした?」

「彼に頼みがある」

「わかった。アロが来たら、すぐに折り返す」

「ありがとう」

 通信を切った。

「マルト、昨夜私が逃亡するのを助けた者がいる。本部からの連絡だと言って、私が潜んでいたエリアから追っ手を移動させたのだ」

「それは、確かですか?」

「そう思う。誰だろう? 情報部のイアンか?」

「ラビスミーナ様がこちらにいらっしゃることはわかっているかもしれませんが、セシル・フレミングであることまでは気づいていないでしょう。それに、偽の情報を流せるほど情報部がハルタンの治安部に入り込んでいるとも思えません」

「それでも、そろそろイアンと話す時だな」

 端末が鳴った。爺さんの端末からだった。

「セシル、タンベレだ。無事でよかったよ。しかし、驚いた。昨夜急に治安部の警察課が動き出して、よりによってあんたを捕まえると言うんだからな」

「それまでは何の話もなかったんだな?」

「もちろんだ。あればあんたに伝えている。マイト課長だって驚いていたんだ。あの時動いていたのは、治安部長の息がかかった精鋭部隊だった」

「秘書官は?」

「かかわっている可能性は大ありだ。治安部長単独では難しい」

「やはりそうか」

「しかし、よく……」

 アロは言葉を濁した。

「部屋に爆発物が仕掛けられていた。ドアを開けば、爆発する仕組みだ。ドアを開ける前に気が付いて逃げ出したが、その後は追い駆けっこさ。ジョンに助けてもらったんだが、そのあたりは?」

「ああ、ジョンから聞いている。俺たちの知っているセシルとは、似ても似つかないそうだが。今、総領事館にいるのか?」

「そう」

「怪我は?」

「もう大丈夫だ。それより、アロ」

「ああ、俺に頼みがあるんだってな?」

「そうなんだ。マリアの行方を知りたい」

「マリア? マリア・ラデューか?」

「ああ。昨夜滞在先に戻らなかったらしいんだ」

「ふうん。確か、マリアはハマリ家の屋敷の模様替えの相談か何かで、昨日はナオミのところに行く約束になっていたはずなんだが。今、ナオミに聞いてみよう。待っていてくれ」

「ありがとう」

「お安い御用だ」

 アロはあわただしく通信を切った。


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