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若い、若すぎる……マリアの、さっきの話と合わない……だが、それよりも……私は走り出していた。マリアを迎えに来た青年が、マリアをエアカーに乗せる。ロータリーを出て行く前に、私はポケットから取り出したカメラのシャッターを幾度か押した。すぐにロータリーでエアカーに乗り込み、指示を出す。
(ロータリーを左に出て、追い越し車線、スピードを出せ)
有難い、夕刻の道は思ったほど混雑していなかった。仕事帰りのエアカーで混雑するのは、もう少し後なのだろう。このまま行けば、見つかるはず……見えた、マリアとあの青年を乗せたエアカーだ。
(二台先のエアカーを追え)
思念で伝える。私が乗っているエアカーが承認し、前方の、二人を乗せたエアカーに捕捉電波を送った時だった。突然、エアカーの電脳が初期化し、停止した。追跡をかわされた……妨害波だ。あの青年が乗って来たエアカーは流しじゃなかった。個人の、恐らくあの青年のものだろう。自分のエアカーが何かに捕捉された場合、それに対抗する装置をつけることは可能だ。ただし、普通そんな装置は付けないが。私はカメラで撮った映像を見た。青年の横顔。やはり似ている。というか、おばば様のところで見たリン・メイそのものだ。走り去るエアカーのナンバーは、残念ながら白い靄がかかったようにしか写っていない。あの、爺さんが撮った画像と同じだ。やはり、リン・メイなのか?
「マルト」
私は胸のブローチで総領事マルト・サールを呼んだ。
「ラビスミーナ様、お帰りになる頃だと思っていました」
「うん。これからそちらに行く。見てもらいたいものがあるんだ」
「私に見せたいもの? わかりました。入り口でエステルが待っています」
私の空気が伝わったのかもしれない。マルトの声が緊張した。
「ありがとう」
通信を切って、別のエアカーを拾い、領事館に向かう。リン・メイ……あの青年が、ハニヤスとハルタン領主ロマン・ピートが探している人物か? だとすれば、確かに青年に見えたが、果たして青年なのか? 本当にあの姿だった……それに、マリアの話……
エアカーはあっという間にゼフィロウ総領事館の前についた。ホールへ続く扉の所にエステルがいた。
「こちらへ。ご案内いたしますわ」
「ハルタンの治安部だろうか? ここに用があるとは思えない連中が二、三いたが?」
私は総領事館の周りで見かけた男たちのことを聞いた。
「ええ。昨夜から、ずっとですわ」
「おや、リムジンだ」
総領事館の地下から出て来たリムジンが通りに出て行った。
「ハルタン領主から直々に高度医療施設計画が発表されることになっているのです。それにゼフィロウも招かれていて、その方たちの送迎のためですわ」
「ハルタン領主が直々にか。父上は?」
「ご招待されていらっしゃいました。ですが、ゼフィロウには、内々にではありますが、レンの調査が入っているということで、ご遠慮なさいました」
「誰が来ている?」
「主に厚生課の方々が。エア様の名代はジョセフ・パイアール議長、他にエドモンド・ショー通商部長、ジャン・ブロム技術開発部長もいらしています」
そうか、私がゆっくりチューブで移動している間に、彼らは高速のデミウルゴスでやって来たというわけだ。
「ケイティーは留守番か?」
「最高会議のメンバーが全てゼフィロウを離れるのはどうかということでしょう」
エステルはちらりと私を見て言った。
「なるほど」
エステルと一緒にエレベーターに乗る。
「ラビスミーナ様」
扉が開くと、マルトが待っていた。マルトが合図し、エステルが仕事に戻る。
「ゼフィロウからの客の応対で忙しいところ悪いな」
急ぎ足で戻るエステルを見送って、私は言った。
「いいえ、エステルを中心にしてスタッフが対応しておりますので、私が付ききりでいる必要はないのです。それよりも……」
「ああ」
私たちはマルトの執務室に入った。




