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「ラビスミーナ様、これまでの調査結果については、何もお聞きにならなかったのですね」
「聞いても話さない」
「団長は慎重ですね」
グリンが苦笑した
「ああ、何しろあの保管庫に近づけるのは、技術者はともかくとして、それなりの立場の者ばかりだ。いくらレンでも、慎重になる」
「ラビスミーナ様っ」
早足でユリアが入ってきた。
「どうしたんだ、ユリア?」
「ローツが……ヨーク・ローツが、自殺しましたわ」
「何だって? ローツは最高会議の名のもと、治安部の監視下に置かれていたはずだ。自殺などできないぞ?」
「それが……ハルタンで療養中の母親の状態が急変したという連絡が入り、ハルタンに行く許可が下りたのです。もちろん、監視付ですが」
グリンが補足した。
「ラビスミーナ様が神殿にいらっしゃった間ですわね」
ユリアは言った。何ということだ……
「しかし、自殺とは」
腑に落ちない。
「ハルタンの病院で母親に面会した後、移動中に監視を振り切り、施設の地下にある焼却炉に身を投げたそうです。焼却炉は稼働中でした」
ユリアは言った。
「焼却炉に身を投げるなど、尋常じゃない」
グリンが呟く。そう、それに、馴染の薄い場所で自殺など、そううまくできるものだろうか?
「焼却炉と言えば、ロックもしてあるだろうし、安全装置もあるはずだ。作業員もついているはずだが?」
「はい。その上、モニターの監視も行われていました。しかし、ロックがたまたま外れており、安全装置は切ってありました。作業員が駆け付けましたが、間に合わなかったそうです」
ユリアの報告に、グリンは私を見た。
「たまたま、ですか?」
「母親は?」
私はユリアに聞いた。
「大変なショックでしょうね、このことを知れば、の話ですが」
ユリアが頷く。
「そうではなく、母親の状態はどうなのだ? 呼び出されるくらいだから、かなり悪かったのだろうな?」
「そのことについては、何も」
「聞いてみてくれ。それとローツに知らせをよこしたのが誰だったか」
「わかりました」
ユリアが調べに出た。
「ハルタンに行かれますか?」
「その前にちょっと父上に挨拶して行く。後は頼む」
グリンが頷いた時だった。扉のモニターが新たな来客を知らせた。パイアール議長と法務部長のケイティー・ヴェルナレフ、そして情報部長イアン・レオだ。
(入れろ)
思念で扉を開く。
「失礼するわ」
こう言いながら入って来たケイティーに、パイアール議長、そしてイアンが続いた。




