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レンの調査団団長が、調査員二人を従えて入って来た。眼光鋭い六十代。体は細く、長身で大きく窪んだ眼の上に、ぼさぼさの眉が目立つ。
「ご多忙のところ、失礼する」
団長が言った。
「こちらに資料が用意してあります。どうぞ」
グリンが三人を応接に案内し、最後に私が続いた。
「留守にされていたようだが?」
団長が窪んだ眼で私をじっと見た。
「はい、父に言い使った用事を済ませに。それと、神殿の方にも行っていましたので」
「そうですか。結構です」
団長が資料をカバンにしまった。
「もう、いいのですか?」
「ニエドの領主から招かれた式典に出席するため早朝にゼフィロウを立ち、戻った足で、すぐに潜水艇訓練、その後、治安部の会議、そして、そのまま城から外に出ていらっしゃらないとのことですな。式典、訓練、会議では終始目撃者多数、城の思念認証システムは、会議から戻ったあなたが、城の外に出なかったことを示している。その上、庁舎のモニターも、庁舎の思念の認証システムも、メヌエットのある保管庫に続くいかなる通路にもあなたが近づかなかったことを示しています」
流石に優秀なレンから派遣されてきた職員だ。あらかじめすっかり調べはついているようだった。
「たまたまアリバイがあって好運でした。でも、誰もが私のようにはいかないでしょう?」
「ええ、エア様など、自室にいたことを証明する認証のデータは、他のデータと密接に関係しているから見せるのに時間がかかるとか、そもそも思念の認証を消す技術は自分が開発に関わったのだから、作る気になれば簡単なものだなどと……」
団長はぼさぼさの眉をしかめた。
「父はあなたとの会話を楽しんでおられるようだ。そう簡単に楽しい客人を手放したくないのでしょう」
私は言った。
「全くあの方は……」
団長、そして他の二人が苦笑する。
「で、調査の方は進んでいるのですか?」
「あなたのようにはっきりとしたアリバイがある方を除けば、残りは三十人程度でしょうか」
「可能性がある人物が随分残っていますね?」
「技術開発部の研究員が半数以上ですが、他にも高い役職の方々が残っています。役職が上になればなるほど、調査に制限がかかる。ゼフィロウ内部の機密事項に触れますからな」
団長は恨みがましい顔をしたが、それはこちらのせいではない。どこの核も同じはずだ。
「それに、我らが考えていない方法で近づけた者がいるかもしれない……まだまだ先は長そうです」
団長は付け足した。
「パイアール議長にご相談しては?」
レンに調査を依頼したのはパイアール議長だ。少しは責任を感じてもらわないと困る。
「そうなのですが……あの方が穏やかなのはわかりますが、どうも、部下に遠慮しすぎるきらいがあるようですな」
「そうですか」
残念だが、そんなところだろう。
「では、続きがありますので」
団長と調査員二人が立ち上がった。
「私は大巫女から用を言い使ったので、これからまたゼフィロウを離れますが」
「ええ、私たちもいったんレンに戻って、これまでの結果を検討する予定です。あなたに関しても、更に調査が必要ならば、ご連絡させていただきます」
「いつでも、ご遠慮なく」
私は決まり文句を口にした。
「ご協力に感謝します」
団長が無愛想な顔で言い、調査団は帰って行った。




