66
落ち着いた感じの兄と安定感のある母親に夫人と子供たちを預け、私は城に戻った。部長室に入ると、夫人から預かった封筒を取出し、机の上にモザイクのかかった画像を置いて眺めた。
「失礼します」
グリンが入って来た。
「レンの調査員を呼んでもよろしいですか?」
「ああ、こちらにお呼びしてくれ」
「それは?」
机の上の画像にグリンが目を止めた。
「ハルタンのラスキングという潜水艇乗りが撮ったのものだ。トゥビンはこれを夫人に預けた。そうだ、トゥビン夫人とその二人の子供、それに身を寄せたご家族の身の安全を確保するよう、ユリアに伝えてくれ。これを手に入れたこと、入手先は内密に」
「わかりました。しかし、また、ハルタン……」
「ハニヤスはハルタンに行った。メヌエットはハルタンに送られている。ハルタンの治安部が映像の入った記憶媒体をゼフィロウの技術者に送り、解析した技術者は殺された。そして、おばば様を通してハニヤスが私に確保するよう依頼してきた人物もハルタンの者だ」
「ハニヤス殿、そして大巫女様まで。レンの調査が終わったら、またハルタンに行かれるのですか?」
「ああ」
「あの技術者の遺体。気になります」
「ここにハルタンに繋がりのある者がいる。レンの調査団は何か嗅ぎ付けたかな?」
「お待ちしていると伝えます」
グリンが部長室の電脳からレンの調査団の団長と連絡を取った。
「すぐに来られるそうです」
「うん」
私は画像を封筒に戻し、制服の内ポケットにしまった。




