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「ユリア、どうした?」
「おそらくラビスミーナ様がお探しの人物が見つかりましたわ。画像解析の専門家エドゥアルド・トゥビン」
思わずグリンと目が会った。
「どこにいた?」
「ご覧になりますか?」
ユリアの手には資料がある。
「もちろんだ」
「死んでいましたわ」
ユリアは持っていた資料を差し出した。それに載っていた数枚の写真。大きな倉庫の一角に置かれた冷凍庫。その前に置かれた椅子に男は固定され、座っている。が、その顔の半分下の肉が溶けている。
「そこに書かれている通り、倉庫にあった水酸化ナトリウムを使ったのですわ」
資料を覗き込んだグリンが眉をしかめた。
「解剖の結果、麻酔薬が検出されています。首にひもの跡もあります。意識がないところで絞め殺したようです。水酸化ナトリウムを使ったのはその後でしょう」
ユリアが言った。
「水酸化ナトリウムが最後だったのはせめてもの救いですが……しかし、いったいなんでわざわざ?」
グリンが資料の男を見つめた。
「溶けているのは唇と舌だ」
「しゃべるな、ということでしょうか?」
グリンは私を見た。
「それとも、見せしめ?」
ユリアが腕を組む。
「殺されたこの男の他にも、犯人のことを知っている者がいるということか?」
グリンが丹念に資料を見始めた。
「死んでから話すことはできない。それでも、これだ。犯人の思考は病的なのかもしれないな……倉庫に出入りできたのは?」
私は聞いた。
「それが……システムが故障して認証が使えないままで、頑丈な鍵をかけていました。思念の認識なしで出入りができるのです。発見したのは管理を請け負っていた会社の清掃担当者で、休暇を取る都合で、たまたま繰り上げて巡回したんだそうです」
「エドゥアルド・トゥビンの家からは?」
「歩いて十五分程度です」
「犯人はこの場所をよく知っている。下見をしていた可能性も高い」
「倉庫周辺の映像に残った人物を目下調査中です」
「ああ、それと、ユリア、エドゥアルド・トゥビンが受けた仕事の画像は残っていなかったんだな?」
「トゥビンの電脳は専門家に調べさせました。研究室の資料も同僚の協力を得て探しましたが、ありませんでした。恐らく、トゥビンが処分したか、持ち去ったか……」
「前もって依頼者からの指示があったのかもしれませんね」
グリンも頷いた。
「トゥビンと接触のあった人物をもう一度調べてみますわ」
「そうしてくれ、ユリア」
ユリアが下の治安部に行った。
「倉庫までサブウェイを使って三十分か。グリン、ちょっと出かけてくる」
「問題の倉庫ですか? お帰りになった早々、出かけなくとも……」
「見てみたいのだ」
「わかりました。レンの調査の方は?」
「今日中に済ませたい。用事を済ませたらすぐ戻ると言っておいてくれ」




