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 着替えをし、シャワーを浴びてうとうとすると、ベルが鳴った。朝食までにはまだ三時間ほどある。モニターで客をチェックすると、やはりジョンだった。

「開いているわ。入って」

「ちょっと早かったかな?」

 ジョンが入って来た。声が緊張している。

「大丈夫、着替えるからソファーにかけて待っていて」

 ベッドルームから声をかけ、間もなく例の化粧とスーツで現れた私を見て、ジョンは首をかしげた。

「単車の、乗り方を教えてくれるんだろう?」

「そうだけど?」

「その恰好で?」

「気にしないで。さあ、行きましょう」

 ジョンの相手をしてそのままポートに行くつもりだったので、セシル用の着替えと化粧道具一式を持つ。

「出かけるって、旅行?」

「営業はいろいろあるのよ」

 ジョンを促して通りに降り、ジョンの操縦する単車の後ろにまたがった。

 シャーム通りを抜け、タンニ川を渡る。橋はおしゃれなシャーム通りにぴったりの装飾の多いもの。それを渡ると、ごみごみしたビルが並ぶ。

「驚くと思うよ。セシルさんのところから近いんだ。ああ、あれが俺の家」

 ごみごみしたビルの、その中のくすんだ桃色のビルの一階、痛んだ緑色のドアをジョンは指差した。

「ね、近いでしょう?」

「赤い花が、植えてある」

「母さんは花が好きなんだ。でも、よく水をやるのを忘れる。母さんが忘れている時は俺が水をやるんだよ」

「仲のいい親子なのね」

「どうだろう……たぶん、ね」

 ジョンは照れを隠すように声を上げた。

「あそこ、あそこが普段仲間と練習しているところなんだ」

 そこは老朽化した建物の並ぶ一角で、再開発を待つ地域だった。簡単なフェンスがあって立ち入り禁止になっている。人影はない。中に入ると広い通りと細い路地があり、単車を操る訓練にはいいだろうが……

「人が飛び出してくることはない?」

「みんな引っ越した。練習中に人に出会ったことは一度もないよ」

 ジョンは請け合った。

「そうか、じゃあ、早速」

 私はバッグの中から小さな工具箱を出して、ジョンの単車の電脳部分(オルクに比べればおもちゃのようなものだ)を開け、思念を受ける部分をブロックした。

「安全装置は外していない。だから、ジョンがパニックを起こしたと認識すれば、スピードは落ちるし、自動制御が働く」

「わかった」

「まずは、ゆっくりとこの単車を走らせてみて」

 頷いてジョンは単車にまたがり、一回り回って来た。

「思念を使わない操作は頭に入っているようね。次は私の後ろに乗ってみて。どんな時も自分で運転しているつもりになって操作を思い出すのよ」


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