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 P5のポートから三十分ほどサブウェイに乗り、ゼフィロウの総領事館が近いエルモ駅で降りた。地下から大通りに出る。わずかに歩けばリモン橋、その下にはタンニ川が流れている。なだらかな土手は草花で覆われ、人々が寛いでいるのが見える。このあたりは瞑想の館や公園が多い。ハルタン庁舎からは程よい距離を保ち、ハルタンの中で特に緑の多いこの地区に、ゼフィロウの総領事館はある。木製の大きな扉は開いたままになっていて、その先に厚い硬質硝子の自動ドアがあった。夕日でオレンジ色に輝く硝子のドアが開く。

 ロビーに入ると、今日中に仕事を終えてしまおうと、ゼフィロウからハルタンに派遣されてやって来た技術者たちや、ハルタンで治療を受けるため手続きをする患者やその家族、またはその手続き代行人たちで込み合っていた。(セジュでは、他の核で三か月以上過ごす場合は、その旨を所属の核と行先にある自分の核の総領事館に届け出る義務がある)

 総領事館を訪れる人たちを興味深く眺めていると、窓口の女性が言った。

「あの、御用を承りますが」

「ありがとう。セシル・フレミングと言います。総領事にお会いしたいのですが」

「総領事、ですか?」

 若い女性は上から下まで私を見て眉を寄せ、きっぱりと言った。

「いいえ、総領事はお会いできません。お仕事が詰まっておりますので。他の者ではいけませんか? どのようなご用件なのです?」

 彼女は用心深い目で私を見た。用があると言ったのは総領事の方だが、ここでそれを言うわけにもいかない。周りが私を見、目を逸らす。通信装置で呼ぼうと思ったが止めた。壁に耳あり障子に目あり、だ。

「いいです。出直します」

 私は外で通信装置を使おうと思って回れ右をした。が、奥から中年の女性が声をかけた。

「出直すなんておっしゃらずに。私がお話をお聞きしますわ」

「でも、きっと……」

 窓口の女性が眉をしかめた。

 クレーマーか何かと疑われたのだろうか。私は笑いをこらえて窓口の若い女を見た。

「まあまあ、フレミングさん」

 奥から出てきた女性の方は、私になだめるように声をかけ、小さな部屋を示した。私たちの動きに目を止めた者はいない。窓口の女性も次の客の応対に戻っていた。

「こちらへどうぞ」

 中年の女性は部屋の扉を閉めると、さらに奥へと案内した。その続きの間から廊下に出て、エレベーターに乗る。

「そのお姿では、わかりませんわ」

 女性は言った。

「外に出て通信装置で話そうと思ったところだった」

 上から下まで、まじまじと私を眺める女性に私は答えた。

「次からはエステルに用があると仰って下さい。すぐにご案内できますから」

「エステルはあなたの名前?」

「はい、エステル・マギと申します」

「わかった。ありがとう、エステル」

「お目にかかれて光栄です、ラビスミーナ様」

 エレベーターを降り、正面の総領事室に入った。中でマルトが待っていた。

「ラビスミーナ様、お出迎え出来なくて申し訳ありませんでした」

「とんでもない。出迎えられたら、この恰好も台無しだ」

 私はすっかりなじんだかつら、メイク、そしてスーツを指差した。

「でしょうな」

 マルトは微笑んだ。中年、細身、しかし鍛えられている。大きな青い目に、細い鼻筋、薄い唇。甘めの顔立ちだが、嫌味がない。きれいな金髪は整えられ、穏やかな笑みが似合う。スーツの着こなしも隙はなく、落ち着いたイントネーションは社交の場で信頼を勝ち得るだろう。だが、一見紳士だが、外見は当てにならない。武器を持たせれば使える、そんな話も聞いている。

「まずはこちらでガルバヌム様とお話し下さい」

 マルトが机上のスクリーンを神殿に繋いだ。


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