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「選手はこちらへ」
間もなく係員に呼ばれ、レーススーツの私から事情を聴いたマックとジョンは唖然とした。
「あんたがアランの代わりに走るって言うのか?」
マックは嫌悪に近い表情を浮かべている。
「喜ばないのか? これで頭数は揃ったのだぞ?」
「だからって……」
ジョンはどうしていいのかわからないといった顔だ。
「私の腕については心配無用だ。走るからには勝つ。気を抜くなよ」
第一印象とは違ったのだろう。二人はまじまじと私を見た。
「あんた……俺に声をかけたな。一周目が終わった時だ」
マックは言った。
「聞こえたのか? よく持ち直したな」
「……仕方ない、あの一声に免じて、あんたを迎えるよ」
「結構。ジョンは?」
「俺は……もう一度走れるなら……」
「そうか、では、決まりだ。私はアランの代わりだから、第三走者だな。二人ともぐずぐず走るなよ」
「こっちのセリフだ」
マックがすっと胸を張った。ヘルメットを持った指の処置が改めてなされていた。
「もう一度、だ」
ジョンが頷く。
「第一走者はコースについてください」
アナウンスが流れる。
「じゃあな」
マックが走って行き、走者が揃った。マックは第七コース。ブザーが鳴った。マックが飛び出した。けがの影響はなさそうだ。勢いで押していく操縦者が多い中で、マックは単車の扱いが丁寧だ。メカニック気質だろうか? 爺さんもそんな操縦だったのだろうか? リレーもコースは同じで壁、溝、泥濘、さらに高い壁、急な下り坂、そして最後の直線となっている。個人戦で一度走っている走者が多く、みな慣れたものだ。いや、慣れていない走者がここにいる。顔が蒼白い。
「ジョン、慌てるな。自分のペースで走れればいい。走りたい、お前はそう言っただろう?」
「そう、言った」
「ただ、走ればいい」
「本当に?」
「さあ、行って来い」
マックが二周目に入っていた。三位争い。ジョンが合図を待つ。マックが三位で入り、ジョンが出た。が、すぐに後ろに迫っていた四位の走者に抜かれた。落ち着け、ジョン。後は何とでもする。四位、五位、六位,七位……ジョンはストレッチはいいものの、障害で間を開けられた。反応が遅いのだ。まあ、いい。走っている。走ってくる。




